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遺伝子検査のもたらす素晴らしくも恐ろしい未来(下)--99ドルで解析も、その先にあるもの

Jo Best (ZDNet UK) 翻訳校正: 村上雅章 野崎裕子

2015-08-11 06:30

 前編に続いて、遺伝子検査のもたらす未来について考察する。

DNAの発見

 99ドル程度を支払って数週間待つだけで遺伝子を解析してくれる企業はいくつかある。このため、ゲノムのシーケンス解析は簡単なプロセスのように聞こえるかもしれない。しかし、このプロセスは20世紀における最も革命的な複数の科学的成果に基づいている。

 50年前まではDNAの働きはおろか、その存在すら分かっていなかった。しかも、ヒトのDNAにおける各部分にどのような意味があるのかについての共同研究は、1993年になるまで開始されなかった。これがヒトゲノム計画の本格的な始まりだ。その目的はヒトという生物が持つゲノムの完全なシーケンス解析を行い、医療技術に革命をもたらすというものであり、米国や欧州、中国、日本の研究者らが力を合わせても10年以上かかると考えられていた。

 研究者らがDNAのシーケンス解析に着手したのは1970年代の半ばであり、その際に用いられたサンガー法と呼ばれるプロセスは原始的で時間のかかるものだった。

 まず、シーケンス解析の対象となるDNAを断片に分割し、バクテリア内に取り込ませる。このバクテリアは、取り込んだDNAを切断、複製することで、そのDNAを短時間で増幅する。

寒天培地上で培養中のバクテリアのサンプル
寒天培地上で培養中のバクテリアのサンプル
提供:Bill Branson(米国立衛生研究所)

 DNAは、自然の状態では2本のストランド(鎖)がらせん状に絡み合った形状となっており、それぞれのストランドから突き出た塩基群が水素結合によって他方のストランドをつなぎ止めている。バクテリアからDNAを取り出し(この作業自体も非常に難しい作業だ)、絡み合った2本のらせんの塩基部分を切断し2本のストランドにする。次に、一連の化学反応によって、4種類の塩基ごとにさまざまな放射性を帯びた化学物質を結合させる。

 その後、もろくなったDNAをゲル(支持体となる緩衝溶液)から取り除き、乾燥させたうえで写真乾板を感光させる。すると、DNAストランドの塩基部分に結合した4種類の化学物質が放射性標識として機能することで、写真乾板上に黒い影を残すというわけだ。

 1970年代や1980年代のほとんどは、こういった塩基の並びを記録する機械など存在しなかったため、研究者らは物差しを使って手作業で記録していた。

 米国立ヒトゲノム研究所でゲノム技術プログラムの責任者を務めているJeff Schloss氏は当時を振り返り、「椅子に座って(DNAストランドが固定されたプレート上の)ゲルを見ながら4種類の文字を読み上げ、隣の同僚に書き取らせることになる。物差しをゲルの下から上に向かって動かしながら、横にいる人間が『A、T、T、C、A、G、T』と記録していくわけだ。ゲルを流し込むというプロセスの性質上、ゲルの状態は完璧とは言えない場合も多々あった。レーンは波打ち、あちこちに向かっているため、写真で見る時のようにまっすぐきれいにはなっていなかった。とても大変だった」と語っている。

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