三国大洋のスクラップブック

グーグルとトヨタが交錯する時(2) - ロボットカーとオンデマンドサービス普及の余波 - (page 3)

三国大洋

2015-09-25 07:00

 最後にひとつ。冒頭で触れたMerkel独首相の発言について、なかば「いわずもがな」なことを記す。

 Merkelの発言は、「Industry 4.0」関連の集まりに出席した同首相とSAPのHasso Plattner会長との対談のなかで出てきたもので、「われわれ(=ドイツの産業界)は、BtoBやビジネス(エンタープライズ)向けの分野はかなり強い("We’re pretty good at BtoB, we’re pretty good at business,")が、それだけにとどまらず「消費者向けの分野でも魅力的なサービスを提供できるよう適応していく必要がある」(”Germany needs to adapt to offer enticing services to consumers too.”)と強調したなどとある。

 これは、結局のところ、BtoB分野に関連する情報の流れあるいはアクションを促すトリガーが、コンシューマー側にある場合もあるということだろう。

 分かりやすい例が「Google Now」や(iOS 9に実装されてもうじき登場する)「Preactive」のようなパーソナルアシスタント機能(あるいはサービス)で、道路の混み具合をほぼリアルタイムで把握してユーザーに「早めに打ち合わせを切り上げて移動したほうがいいよ」といったアラートがすでに出せるなら、その先にある「移動手段の選択肢を提示する」ことなどわけなくできそう、といったことにも思える。そうして、人間の移動という行為に限っていえば、トリガーとなるカレンダー情報を抑えたところが相撲でいう「上手(うわて)」を取ることになるのではないか。

 さらに、今の時代にはスケジュール管理にスマートフォンを使っている人がかなり多そうなこと、また先進国の大半ではAndroid端末かiPhoneを使っている人がほとんどであること(AOSP端末が大半を占めるという中国やインドなどのことはよくわからないが)なども考えあわせると、そうしたコンシューマ発のトリガーで上手を取れそうなものがいまのドイツ企業にはあまりなく――Amazonのことを考えると、人の絡まない物流の分野でも同じことがいえるかもしれない――、そのトリガーの欠如に対してMerkelらが危機感のようなものを抱いている・・・・・・・。深読みのし過ぎかもしれないが、そうした考えも頭に浮かんだ。

付録1:関係しそうな各社の時価総額/評価額の比較

  • トヨタ:約1994億ドル($199.38B)
  • ホンダ:約544億ドル($54.41B)
  • 日産:約392億ドル($39.20B)
  • Daimler:約854億ドル ($85.41B)
  • Volkswagen:約870億ドル($86.99B)
  • AUDI:約370億ドル($37.07B)
  • BMW:約550億ドル($55.08B)
  • Ford:約540億ドル($53.80B)
  • General Motors:約460億ドル($45.75B)
  • Tesla:約314億ドル($31.40B)
  • Apple:約6231億ドル($623.14B)
  • Google:約4214億ドル($421.45B)
  • Uber:約510億ドル
  • Didi Kuaidi(中国):約165億ドル
  • Ola(インド):約25億ドル

 ( )内の金額は9月7日時点の時価総額(参照元:Google Finance)。未上場の自動車配車/共有サービス3社(Uber、Didi Kuaidi、Ola)については、WSJの下記ページを参照

  • The Billion Dollar Startup Club
  •  上場企業と未公開のベンチャー企業、あるいはしっかり利益を稼ぎ出しているところと赤字を出しながら事業拡大に突き進んでいるところを比べるのも乱暴な話だが、投資家からの(各社の将来に対する)期待度がわかるという点では一定の意味がある比較だと思う。そういう前提で1つ頭の隅に入れておきたいのは、やはり「Uberへの期待度が、Teslaへのそれよりも大きく、BMWやホンダのそれにほぼ匹敵するレベルにある」という点かもしれない。

     また、Evansの指摘するように自動車の設計・製造に関する変化が生ずるとすれば、スマートフォンの世界におけるXiaomiがそうだったように、いまはまだ存在しないプレーヤーが登場し、短期間に大きな影響力を持つ、という可能性も思い浮かぶ。

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