Dellが「Dell Technologies」として新たに始動した。エンタープライズ向け事業のブランドは「Dell EMC」に、PCおよびVMwareのブランドは「Dell」に変更されている。Michael Dell氏の改革の要だ。
Dellは米国時間9月7日、EMCの買収を完了した。Dell Technologiesは、Dell、EMC、PC事業部門、VMware、SecureWorks、Pivotal、Virtustream、RSAなどの事業を傘下に収める。さらに、EMCの「VCE」のようなコンバージドインフラストラクチャも同社の事業に加わる。
Dell Technologiesの事業項目は広範なものだ。今後このエンタープライズ市場の巨人が、顧客管理、イノベーション、製品の重複などの問題をいかに解決していくかは、まだ明らかになっていない。興味深いのは、ライバル企業であるHewlett-Packardが、Hewlett Packard Enterprise(HPE)とHP Inc.の2つに会社を分割していることだ。Lenovoはエンタープライズ事業の拡大に意欲を燃やしている。またIBMは、差別化が困難となったデータセンター機器事業のほかに、「Watson」やアナリティクスをはじめとする成長市場に集中しようと再編を進めている。
実際Michael Dell氏は、データセンター市場の競合企業がスリム化を進め、即応性を高めようとしている中、その流れに逆らって大規模化へと進んでいるように見える。その一方で、ますます多くのワークロードが、エンタープライズ市場の御三家である「Amazon Web Services(AWS)」「Google Cloud Platform」「Microsoft Azure」に移行している。
Dellの最高経営責任者(CEO)であるMichael Dell氏は、合併後の企業規模が巨大なものになるにも関わらず、即応性と革新性を高めると約束している。結果がどう出るかは、先にならないと分からない。この記事では、今後同社が解決を迫られる課題について考えてみたい。
巨大ハイブリッド企業が向かうべき方向は
DellとEMCが合わされば、データセンターを支配できることに疑いはない。あらゆるエンタープライズは、新生Dellの製品を何かしら購入することになりそうだ。そこにVMwareが加われば、多くのエンタープライズは取引するベンダーが減ることになるのは明らかだ。
これは、よいことだろうか?Dell Technologiesの主張はイエスだ。規模が大きくなることによって、顧客企業の取引先の数が減るのだから、素晴らしいに決まっている。しかし、顧客企業は多様性を好むかもしれない。たしかに、IT予算に占めるDell Technologiesへの支払額は増えるだろうが、多くの顧客企業は取引先を多様化しようとするだろう。
問題は、その多様化がどう進められるかだ。顧客のデータセンターには、LenovoやHPEなどの従来のライバル企業の製品が増えるのだろうか、それともパブリッククラウドへの移行が進むのだろうか。