「作らない社内システム」

「作らない社内システム」が生んだ成果--働き方の変化と経営へのインパクト - (page 4)

大石 良

2017-02-13 07:00

結論

 「IT戦略の巧拙が経営に大きな影響を与える」ことに異論を挟む余地はないと思います。このため、昨今特にIT部門のパフォーマンスや外部のベンダー(SIer)との関係性に注目が集まっていますが、私は安易なSIer不要論や「システム内製化」には反対の立場です。

 それはSIerやIT部門の善し悪しではなく、日本の労働環境においては米国型のシステム内製化は実現が難しい、というのが理由です

 このような背景がある以上、人手に頼る開発や運用というものは早晩破綻することが明白です。「オフショアを使えばいいじゃないか」という声も聞こえてきそうですが、生産人口が十分に減った後では、満足にオフショアもできません。

 少し前なら中国、今ならベトナム辺りで優秀なエンジニアがわざわざ日本語を覚えてオフショア開発を受けてくれていますが、それは「日本に十分な市場性がある」ことが理由です。


 これから生産人口が減って市場が縮小する場面では、こうした国々が日本を市場として認識することはなくなっていきます。つまり「市場の大きさとオフショアのやりやすさには相関があって、“人が減って市場が小さくなる局面では、人材不足をオフショアで賄うことはできない”のが現実」なわけです。

 このように「必ず起こる未来」は現時点である程度わかっているわけですから、それに備えておくことが健全な姿勢だと考えます。その処方せんとして、人手に頼らない「作らない社内システム」という考え方をお伝えしてきました。

 私たちの会社でこの「作らない社内システム」というコンセプトを実験した結果は、今までお伝えしてきた通りです。結果は非常にポジティブで、これからシステムを内製しようなどとは全く考えられないほどうまく機能しています。もちろん、会社規模が大きくなれば一部がパッケージシステムになることはあると思いますが、根本は変わりません。

 コマツのKOMTRAXがIoTの先進事例として取りざたされていますが、実際にKOMTRAXの構成要素自体は、各種センサ、GPS、PHSなど既存技術の組み合わせです。

 ですが、それらを組み合わせてサービスとして仕立て、かつどこよりも早くそれを実現したところに価値があるのであって、システムを内製したから、またはソフトウェアを自作したから価値が出たわけではありません。KOMTRAXの事例は、既存の技術やサービスの組み合わせでも、新しい価値を提供することができることを証明する、またとない好例だといえます。

 本稿が、皆様がこれからのIT戦略、特に社内のIT環境を考える上での一助になれば望外の喜びです。

大石 良
株式会社サーバーワークス 代表取締役。1973年新潟市生まれ 1996年 東北大学経済学部卒業 丸紅株式会社入社後、インターネット関連ビジネスの企画・営業に従事 。2000 年サーバーワークス設立、代表取締役に就任。 「クラウドで、世界をもっと、はらたきやすく」というビジョンを掲げ、企業の業​務システムのクラウド移行に注力している。​特技はAWS名物となっている「切腹プレゼン」。

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