展望2020年のIT企業

日本発グローバルソフトに向けたサイボウズの決断

田中克己

2017-09-29 10:43

 グループウエアを展開するサイボウズが、米国市場の開拓を本格的に乗り出す。そのため、業務アプリケーション構築クラウドサービスkintoneを稼働させるクラウド基盤(IaaS)を自社製cybozu.comからパブリックな汎用製品へ切り替えることを決断した。

 米国内のデータセンター利用を要望する米有力ユーザーの声に応えるためだ。青野慶久社長の念願である日本発グローバルソフトカンパニーに成長するうえで、米国市場における知名度アップ、シェア獲得のカギが握るIaaSの選択になる。創業20年経ったサイボウズが新たなフェーズに入った。

kintoneに絞り込み、米市場に攻勢かける

 サイボウズがクラウド化に踏み切ったのは2011年だ。売り上げが積み上がっていくビジネスにしたことで、伸び悩んでいた売り上げは2013年度から上昇に転じ、2016年度に2011年度の2倍の約80億円になった。増えたのは、クラウド化したグループウエアと「kintone」だ。それらのベースになる自社開発のクラウド基盤も大きく貢献する。

 青野社長は「意思決定した2010年初頭、(AWSなど汎用)IaaSのサービスは充実しておらず、品質面での懸念があった」との理由から、自社開発したと明かす。サイボウズのグループウエアがクラウドネイティブでなかったことも理由だという。「安定運用など予想以上にうまくいった」とし、青野社長は自社開発の正しさを強調する。

 事実、同社はパッケージソフトからクラウドベンダーへの変身を遂げつつある。ユーザー数は、cybozu.comが2万社超、kintoneが約7000社、中小企業向けグループウエア「Office」が約5万5000社、大企業向けグループウエア「Garoon」が約4200社になった(2017年9月)。

 だが、欧米ソフト会社に比べた企業規模は1ケタも、2ケタも小さい。そこで、米国や中国、アジア、オーストラリア、台湾などに現地法人あるいは事務所を開設し、海外ユーザーの獲得に乗り出した。

 実は、2001年に米国市場に進出したが、3年で撤退した苦い経験がある。日米同時に投資する力がなかった。UI/UXの優先順位が異なるなど、日本向けグループウエアが米ユーザーのニーズに合致しないこともあっただろう。日本企業とは異なり、ユーザー自ら経費計算や人事管理などのアプリを開発する。

 それでも国内だけにとどまっていたら、大きな成長は見込めない。サイボウズは市場変化などで、再挑戦を決意し、2014年7月に米国法人をサンフランシスコに設立した。SaaSビジネスの経験があるディーブ・ラング氏を最高経営責任者(CEO)に、サイボウズ副社長の山田理氏を社長にという体制でスタートする。

 オンプレからクラウドへの移行が本格化するこもあり、扱う商品は1人あたり月24ドルで提供するkintoneに絞り込み、現地法人の社名もkintoneにした。ユーザーは2017年9月中旬時点で130社を超えた。全体の7000社からすると、米ユーザーの数は少ないものの、大規模な企業や団体などが採用してくれたという。

 日本では導入してない日系企業もある。営業やマーケティング、サポートなどで構成する米国法人の陣容も、今年10人強増やし26人にした(2017年9月)。オンライン広告やデモ、展示会、営業拠点の拡充などによって、業務プロセスの改善などに取り組む部門に売り込む。

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