「良い顧客体験(カスタマーエクスペリエンス:CX)を提供するためには、まずはCXの担い手である従業員(ワーカー)の体験(WX)を高めることが大切だ。
現在ではまだ、CXとWXを同時に捉えている企業は少ない。米Appirioは、従業員と顧客の体験をともに変革する」(米AppirioでCMOを務めるLatane Conant氏)
米Appirio CMO(最高マーケティング責任者)のLatane Conant(ラタニー・コナント)氏
米Appirioは、パブリッククラウドに特化したシステム構築会社である。コンサルティングから開発、導入まで、パブリッククラウドに関するSIサービスを総合的に提供している。米Salesforce.comのクラウドサービスの案件が多いが、米Googleのグループウェアなど、用途に応じて適切なクラウド技術を扱う。
CRM(顧客関係管理)を成功させる鍵として同社が目標に掲げるコンセプトが、WXとCXのバーチャスサイクル(好循環)である(図1)。「CXの変革にはまず、WXの変革が必要になる」(Conant氏)としている。
ワーカーエクスペリエンスとカスタマーエクスペリエンスのバーチャスサイクル(好循環)
WXの変革においては、ENGAGED(やる気に満ちた)、PRODUCTIVE(生産性が高い)、AGILE(すぐに適応できる)という3つの従業員の価値を醸成する。「やる気に満ちた従業員が働く企業では、そうでない企業と比べて、顧客からの信頼が233%以上、年間の売上成長率が26%以上高い」(Conant氏)
米Appirioでは、ユーザー企業のバーチャスサイクルの現状をクイックに診断し、次のステップへの提案を実施している。まず、現在のバーチャスサイクルの健康状態を調べる現状調査を実施する。続いて、半日間のワークショップを利用して、課題、打ち手、価値提案などを定める。経営者向けの報告会も実施する。
あるべきWXの姿に合わせて適切なクラウドサービスを選ぶ
WXを変革するプロセスとしてConant氏は、テクノロジーファーストを掲げる。課題に対して、どんな技術を適用すべきかを考えるというアプローチである。具体的には、戦略を立案し、WXのあるべき姿に到達するまでのジャーニーマップを作成する。この上で、適切なクラウド技術を選ぶ。
例えば、WXで醸成する3つの要素のうち生産性については「いつでも、どこでも仕事ができること」が大切になる。この視点でクラウドを選ぶ。ラーニングなら米Cornerstone、オンボーディングなら米Workday、グループウェアなら米Google、といった具合である。データ分析用に米Salesforce.comを使うこともある。
クラウドの利用形態としては、SaaSアプリケーションをカスタマイズせずに導入するケースや、Force.comなどのPaaS基盤を用いてカスタム開発するケースがある。米Appirioでも、Force.comで開発したクラウド型のERP(基幹業務パッケージ)「Cloud Management Center」(CMC)を用意している。
多くの企業は、ありものを適材適所でベストオブブリード型で組み合わせ、カスタマイズをせずに利用している。一方で日本企業には特色があり、「諸外国とくらべてForce.comによるカスタム開発が多い」(アピリオ代表取締役社長兼米Appirio副社長の渡邉崇氏)という。
米AppirioのERPクラウドであるCMCは、これまで同社が手掛けてきたERP構築プロジェクトを要素ごとに分解し、再利用できる要素をアセットとしてライブラリ化したものである。2400件のアセットがあり、4200のアクティブユーザーがいる。小売業向けのフランチャイズ管理パッケージなど、アセットを組み合わせてソリューション化したパッケージもある。