BIの本質とは……? - (page 4)

星野泰啓

2006-07-12 16:56

 また、多次元分析では、集計したデータを格納する「キューブ」という独自のデータベースを構築して分析を行う。キューブのデータモデルとしては、MOLAP(Multidimensional OLAP)とROLAP(Relational OLAP)、およびHOLAP(Hybrid OLAP)の3種類がある。各モデルの特長は表6のとおりだ。

■表6:多次元分析のデータモデル
データモデル概要
MOLAPキューブに専用のデータベース(多次元データベース)を使用する。あらかじめ分析の切り口を決めておく必要があるが、一般的にリレーショナルデータベース(RDB)を使用したROLAPよりレスポンスが良い。
ROLAPキューブにRDBを使用する。分析の切り口を柔軟に変えることができるが、MOLAPに比べ検索時のパフォーマンスが問題となる。
HOLAP集計データに多次元データベースを使用し、明細データにRDBを使用するためMOLAPとROLAPの両方の特徴を備えている。

3-3.レポーティング

 レポーティングでは、データベースのデータからエンドユーザーに対して情報提供(データ検索、レポート作成、閲覧、配信)を行う。レポーティングツールを使えば、かんたんなマウス操作のみでデータベースにアクセスし、各種報告書や企画書、提案書などに必要な情報を見やすい表やグラフとして表示することが可能だ。

 近年はウェブベースのシステムを構築することが主流となっており、エンドユーザーはウェブブラウザだけで利用できる。また、ExcelファイルやPDFファイルに出力するといった使われ方も増えている。

レポーティングシステム 図5:レポーティングシステムの例(画面はMartPortal)

BIの活用例(管理会計システム)

 以上を踏まえて、BIで管理会計システムを実現する方法を考えてみよう。基幹システムである経理システムより、管理会計に必要となる各種データを抽出し、データウェアハウスおよびデータマートを構築する。

 そしてユーザーは、データ分析/活用の基盤ソフトウェアであるBIツールを使用して分析を行う。管理会計システムでは、経理システムでは把握できなかったような、事業別や地域別、販売チャネル別の損益管理やキャッシュフロー管理等のデータ分析/参照が可能になる。

管理会計システム 図6:管理会計システムの例

まとめ

 ここでビジネスインテリジェンスを考える上で、重要なポイントを紹介しよう。

 ひとつは、「ユーザー層に合わせた最適なビジネスインテリジェンス環境を提供すること」だ。

 ユーザーによってデータ分析/活用に対するニーズや持っているスキルが異なっており、どのユーザーにどんな環境を準備するのかをよく検討する必要がある。これをおろそかにすると、使いづらいシステムとなったり、やりたい分析ができないなどの不満が募り、結局は使われないシステムとなってしまう恐れがある。

 たとえば、専門の分析担当者や経営企画、事業企画担当スタッフには、データマイニングや多次元分析など、比較的高度でITスキルが要求される分析環境が必要になるだろう。一方、分析がメインの業務ではないユーザーは、対象者が多くシステム利用の教育を実施するだけでも困難だ。そこでレポーティングにより必要となるレポートを定型化して提供すれば、効果的なデータの見方や活用方法をユーザーはシンプルな操作で利用でき、そのノウハウを特定の個人ではなく組織内に蓄積、継承することにつながる。

 2つめは、「ユーザーニーズの変化に合わせてシステムも柔軟に対応すること」だ。

 BIは、一度システムを構築すればそれで完成というものではない。ビジネスを取り巻く環境の変化は、日々スピードを増している。変化に素早く対応し、企業競争力を強化するため、ユーザーのデータ分析/活用に対する要求も進化する。ビジネス側の分析ニーズに合わせて、システム側も迅速に対応できる柔軟性が求められる。

 この記事を読んでいる方は、きっとBIに関する興味や何らかの必要性を持って読んでいることだろう。この文書から価値ある情報や知識を導き出し、今後のビジネスに役立てていただければ幸いだ。それがBIの本質であり、第一歩となるのだから……。

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