働かない「働きアリ」とジャック・ウェルチの過ち

飯田哲夫 (電通国際情報サービス)

2012-12-25 12:15

 12月15日付の日本経済新聞夕刊、北海道大学の長谷川英祐准教授の研究が気になる。『働かない「働きアリ」がいる!?』と題する記事によれば、働きアリのくせに、その10%は働かないのだと言う。

 働く働きアリだけを集めてみても、やっぱりそのうち10%は働かなくなってしまう。逆に働かないアリだけ集めると、今度は90%が働き始めて、結局働かないアリの比率は10%になるという。

 10%が働かないと聞いて思い出すのが、下位10%を解雇する経営手法で知られた元GE会長Jack Welch氏である。長谷川准教授の説に基づけば、働かない10%を解雇しても、その残りのうちの10%がまた働かなくなってしまうので、解雇する意味はない。

 つまり、Welch氏の経営手法は、必ずしもその効果を発揮していなかったことになる。どうやっても10%は働かないんだから、毎年10%解雇していたら割増退職金のコストが掛かるだけ損である

 では、どうやってこの「10%が常に働かない」という問題を解決したらいいんだろう? 長谷川准教授によれば、「アリは一部の個体が常に働かなくなるようなシステムを、労働の制御機構として採用している(北海道大学ウェブサイトより引用)」のである。

 しかし、これが何のためなのかは分かっていないのだという。ただ、アリという集団生活に長けた生物のDNAがそうさせるのだから、そこにはきっと生き残るためのヒントがあるに違いない。

 そういえば、Googleには「20%ルール」という、勤務時間のうち20%を自分の好きな研究に割り当てていいという制度がある。アリの10%よりちょっと長いが、これは、通常業務とは別のことに時間を割くことが、組織全体の能力を高めている事例である。

 しかし、誰もが10%を自分の好きなことに使うなら、アリの実験同様、常に10%は働いていないことになる。なるほど、これでアリ社会にもイノベーションが起こり、種の生存はより確実なものとなる訳だ。

 とすれば、自分のパフォーマンス、そして組織のパフォーマンスを最大にするには、一日中働くのではなくて、10%は怠けて関係ないことをやるのが良いに違いない。Welch氏も、10%を解雇するのではなくて、全社員に一日の仕事時間のうち10%は怠けるよう指示を出せば、GEの業績は更に良くなっただろう。

 人間、やっぱ週末だって仕事しないで怠けないといけないのである。原稿なんか書いている場合ではない。今日はここまで。釣りだ、釣り!

Keep up with ZDNet Japan
ZDNet JapanはFacebookページTwitterRSSNewsletter(メールマガジン)でも情報を配信しています。

飯田哲夫(Tetsuo Iida)

電通国際情報サービスにてビジネス企画を担当。1992年、東京大学文学部仏文科卒業後、不確かな世界を求めてIT業界へ。金融機関向けのITソリューションの開発・企画を担当。その後ロンドン勤務を経て、マンチェスター・ビジネス・スクールにて経営学修士(MBA)を取得。知る人ぞ知る現代美術の老舗、美学校にも在籍していた。報われることのない釣り師。

ZDNET Japan 記事を毎朝メールでまとめ読み(登録無料)

ホワイトペーパー

新着

ランキング

  1. セキュリティ

    「デジタル・フォレンジック」から始まるセキュリティ災禍論--活用したいIT業界の防災マニュアル

  2. 運用管理

    「無線LANがつながらない」という問い合わせにAIで対応、トラブル解決の切り札とは

  3. 運用管理

    Oracle DatabaseのAzure移行時におけるポイント、移行前に確認しておきたい障害対策

  4. 運用管理

    Google Chrome ブラウザ がセキュリティを強化、ゼロトラスト移行で高まるブラウザの重要性

  5. ビジネスアプリケーション

    技術進化でさらに発展するデータサイエンス/アナリティクス、最新の6大トレンドを解説

ZDNET Japan クイックポール

注目している大規模言語モデル(LLM)を教えてください

NEWSLETTERS

エンタープライズ・コンピューティングの最前線を配信

ZDNET Japanは、CIOとITマネージャーを対象に、ビジネス課題の解決とITを活用した新たな価値創造を支援します。
ITビジネス全般については、CNET Japanをご覧ください。

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]