三国大洋のスクラップブック

G20、OECDの対策案を支持--多国籍企業の課税逃れ問題で

三国大洋

2013-07-25 21:18

 この週末にモスクワでG20蔵相会議が開かれ、多国籍企業による税金逃れ(合法的な租税回避)の封じ込めを狙ったOECDの対策案(指針)を支持することで参加各国の関係者が合意した。各媒体では下記のような見出しの記事でこのニュースを伝えている(OECDがアクションプランを発表した現地時間19日時点のものも含む)。

[OECD Proposes Plan to Stop Companies Avoiding Tax--Bloomberg TV](OECDのAngel Gurria事務総長のインタビュー)

 参加各国の代表者は今後この指針を自国に持ち帰って検討した後、その結果を9月に開催予定のG20首脳会議(露サンクトペテルブルク)で報告、というスケジュール感とのこと。さらにその後、12~30カ月をかけて具体的な案に落とし込まれると、Guardian記事には記されている。

 なお、Bloombergの記事によるとG20の国内総生産(GDP)をすべて足すと、全世界のGDPの約9割に達するという。またアイルランドやオランダ、ルクセンブルグのような多国籍企業が利用している国々はEUという括りでの参加(個別の代表者は出席せず)となるらしい。

 また6月のG8での合意を踏まえて、日本でも政府税調がこの問題の検討にあたることが発表されていた。

15項目の勧告:重点は課税ベースの拡大と利益移し替えの防止

 上掲のGurria氏のインタビューの中にもAppleやGoogle、Starbucks(それにAmazon)といった米企業の名前が出てくるが、これらの多国籍企業が税率の安い国々において登記した法人で利益を申告、あるいは税金のかからないタックスヘブン(バミューダ諸島やケイメン諸島)を利用して非常に積極的な節税策をとっている、というのはこれまで何度か記してきた通り。

 「Action Plan on Base Erosion and Profit Shifting」(註1)と題されたOECDの勧告(“Recommendations”)でも、こうした節税策によって浸食された課税対象の回復や利益移転(移し替え)の防止が重点になっている。

 具体的な項目はかなり広範囲に及ぶが、たとえば、各国の法人税制に一貫性を持たせ、抜け道となるような税制の穴を封じることや、そのための政府間の情報共有の必要性などが訴えられてもいる。また、Googleが英国で批難を浴びた、英国企業(顧客)からの売り上げをアイルランド子会社のものとするようなやり方、あるいは各社が採用しているとされるペーパーカンパニーに知的財産を持たせ、各国の活動拠点(法人)がそのペーパーカンパニーにライセンス料を支払ったことにするといったやり方も防がなくてはならない、などと書かれている。

 なお、3月に出ていたBloomberg記事によると、EU27カ国の歳入不足(財政赤字)は2012年第3四半期に5216億ユーロに達し、米国でも2013年度の財政赤字が8450億ドルとなる見込みだという。

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