若いベトナムはオフショアの有力な選択肢
日本からベトナムを訪れる人は皆、口をそろえて「活気がある」「若者ばかりだ」といった感想を口にします。米中央情報局(CIA)の「The World Fact Book」によると、日本の平均年齢が45.8歳であるのに対し、ベトナムの平均年齢は28.7歳となっており、データからも若者が非常に多い国であることが分かります。


図1 日本とベトナムの人口ピラミッド(CIA「The World Fact Book」より)
オフィスでも街でも、大きなお腹を抱えた妊婦さんをよく見かけます。富士山型の人口ピラミッドは崩れかけているものの、約9250万人のベトナムの総人口が、引き続き購買や生産において大きな力を発揮することは間違いないでしょう。
こうした若い活力がみなぎるベトナムは、日本のIT企業の有力なオフショアとなっています。ベトナムでは「ベトナム社会経済開発10カ年戦略」において、「2020年までに工業国化を達成する」という目標が掲げられており、この工業化戦略の戦略産業を選定する際に、ソフトウェア産業についても触れられています。
現在のベトナムソフトウェア産業のビジネスモデルは外国からのアウトソーシング事業が中心で、日本に対してもベトナムソフトウェア協会(VINASA)が2007年から開催している「Japan ICT Day」など、日本からアウトソーシング事業を呼び込むための取り組みが実施されています。
情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書2013」によると、日本からベトナムへのオフショアは、中国へのオフショアと比較して、実施企業件数ベースで約23.0%、金額ベースで約1.8%とまだまだ小規模です。しかし、同白書では「わが国IT企業のオフショア開発相手国はアジア諸国が中心であり、中国、インド、ベトナムの3カ国が主な選択肢となっている」としています。
また、「近年、ミャンマーなど、より低コストなオフショア開発先を模索する動きが見られるが、相手国として主要3カ国を中心とする傾向には、ここ数年大きな変化が見られず、相手国の多国化が進展している状況にはない」とのことです。ベトナムでのオフショア開発が、日本企業にとって大きな流れであることは間違いないようです。
ベトナムでのオフショア開発に何が起こっているのか
ここ数年のベトナム経済に大きな外的要因として影響を与えたのが、2008年のリーマンショックです。
前述のIPAの白書で、リーマンショックが起きた2008年から直近までの統計を見てみると、ベトナムへのオフショアは実施企業件数ベースでは2008年度調査から2011年度調査までは約1.67倍と伸び、2012年度調査では2011年度調査と比較してやや減少しています。
一方、金額ベースでは2011年は対2008年比で約0.39倍となっており、実に60%を超える落ち込みとなっています。このことから、発注業務1件あたりの金額が少なくなっていると推測されます。
身近にいるベトナム人の中小企業経営者からも「2008年以降、日本からのオフショアがなかなか出てこなくなった。日本の景気はどうなっているのか」といった質問や、「ベトナムのIT業界は日本からのオフショアで伸びてきたが、日本からの仕事があまり期待できなくなったので、米国や欧州での新規顧客開拓を始めている」といった声を聞くことが多くなりました。