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アカマイと考える--M2M/IoTを実ビジネスに取り入れるための3つの勘所 - (page 2)

吉澤亨史

2014-07-24 14:42

目的にあったパケットのやり取り

 「直接M2Mサービスを提供しているわけではなく、あくまでもネットワークの接続性を提供する」(新村氏)同社だが、M2M/IoTに必要となる技術をすでに提供している。

 ひとつは三菱UFJニコスが活用している「J-Mups」という決済インフラだ。クレジットカード決済で必要となる認証や決済リクエストをAkamaiのインフラ上で展開している。

 それまでの決済端末は、端末が電話で通信しており、決済に平均20秒弱かかっていた。これをインターネットにつないでAkamaiプラットフォームを経由してセンターにつなぐという仕組みにした。

 この仕組みを活用することで、「決済の時間を2秒以内にするという目標を実現した」という。電話を一度かけるだけで10円かかっていたので、「時間短縮と通信コストの低減に有効となり、店舗の負担を大きく引き下げることができた」

 同時に、店舗でのクレジットカードの少額利用にも道を開いたとしている。この端末は、おそらくもう2万台に迫っていると説明する。「欠くことのできない重要な決済データのパケットをネット上でひとつも漏らさずに確実に送るというエッセンスは、多くの要件に応用できるはず」

 M2M/IoTに応用できるものとして、新村氏は同社で使用している「Akamai Media Analytics ビデオ視聴品質モニタ」を挙げた。これは、ネット上で映像を見る時にユーザーがどのくらいの品質で映像を見ているかというデータをフィードバック、分析するものだ。このシステムにはQoSモニタなど複数の機能があるが、ネットで映像を閲覧するPCやスマートフォンなどの状況を監視して、一定間隔で送り返しているという。

 このシステムでは、世界で約3000万のユーザーから一定間隔でデータを集めている。ただ「J-Mupsと違って、ひとつひとつのパケットは絶対に失ってはいけないというものではない」(新村氏)。5分の映像のうち10秒の状況データが欠けても、ダメージがないからだ。

 「それよりも大量に集めて統計的にきちんと処理することが重要というシステム」と新村氏が解説した。「例えば、世界規模で何千万台という端末からデータをかき集めなければならないようなM2M/IoTにも適用できる」

パケットを欠かさない

 こうした実績を踏まえた新村氏は、M2M/IoTを活用したビジネスを考える時に注意しておきたいポイントとして「ネットワークに対する考慮」「下り方向の用途への配慮」「データ鮮度に応じた収集、分析メカニズム構築」を挙げた。

 「ネットワークに対する考慮点」に関して、よく聞く声として「ISDNは今だに現役」がある。「ISDNにはゆるぎない確実性、信頼性に対する期待がある」ためだ。同じ理由から通信事業者が提供する仮想専用網(VPN)も選ばれているという。

 だが、信頼性重視のためコストは非常に高くつくことになる。そして、そういったユーザー企業は「インターネットを使えるなら使いたいが何かと不安」と感じていると説明する。曰く「インターネットはトラブルが起きても誰も保障してくれず、セキュリティの不安もある」

 接続については、「末端の接続は携帯が便利」という声がある。「圧倒的なモビリティがあり、今後は車へ標準装備化される可能性」からモバイルインターネットへの期待は非常に強くなっている。一方で、安心、安全を求めて有線であるISDNやVPNを使いたいというユーザー企業も多く、判断に悩んでいる状況という。

Akamai IPAの仕組み
Akamai IPAの仕組み(アカマイ提供)

 不安を持たれるインターネットだが、三菱UFJニコスのケースで提供している「Akamai IPA」という仕組みでは、インターネットでSLA可用性100%を実現していると説明する。これは、ゲートウェイとEdgeServerの間で3つのルートを確立し、保持する「SureRoute」という技術と、IPパケットを3重にして送ることでパケットロスを防ぐ「Reliable transport」という技術でパケットを失うことなく可用性を維持している。

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