NECはかねてからコンピュータと通信の融合を理念としており、コンピュータ相互間、ひいてはモノとモノのネットワーク接続という発想を先取りしてきた。このような提唱から30年以上を経たいま、インターネットの急速な発展は、モノのインターネット(Internet of Things:IoT)という形で、かつては構想だった概念が具現化しようという段階にきている。同社はいかにして、IoTを活用、推進していくのか。その方向性を探った。
新事業推進本部 M2M・ITS事業推進部 部長 木村聡氏
マシンがつながるものを、広く捉える
「NECは、ICTにより、社会インフラの高度化を実現していきたい。官公庁などが主体となるインフラに限らず、医療や流通などの生活基盤、人々の生活を支えるもの、つまり『社会ソリューション』といえるものを、われわれの技術で実現し、新しい社会価値を創造することが基本的な考え方だといえる」と、NEC 新事業推進本部 M2M・ITS事業推進部 部長の木村聡氏は話す。
同社の構想を支える基盤として、3つのキーワードがある。「SDN」「クラウド」「ビッグデータ」だ。さまざまなデータを集めるネットワークには、SDNという新技術を応用して、効率的に対応する。次に、数多くの情報を集める器はクラウド。さらに集まったデータを分析し、新しい価値を見出していくのがビッグデータだ。NECは、これらを組み合わせて、モノのインターネットに取り組んでいる。
社会ソリューションを司るビッグデータを支える要素として、機器間通信(Machine to Machine:M2M)がある。あらゆるモノがつながる社会の基軸となるのがM2Mだ。「多種多様な情報を集める仕組みを作り、その基盤の上で製品やサービス、価値を提供する」(木村氏)のが任務といえる。
NECは、M2Mを活用するためのサービス群「CONNEXIVE」を展開している。「CONNEXIVEは、2011年に立ち上げたのだが、その時点ですでにわれわれはIoTという言葉を使っていた。さまざまなモノをつなぐことにより、価値を提供しようという考えは、10数年ほどから唱えているが、近年、クラウド技術や通信環境が改善され、質的にもコスト面でも扱いやすくなったため、さらにはM2Mクラウドとして、より広範に拡がってきている。
M2Mは、Machine to Machineというよりは、むしろ、M2“management”という側面があり、さらに、Machineの先には必ず人がいる。われわれとしては、Machineがつながるものを、できるだけ広く捉えて、この考えを実現させていきたい」(木村氏)とNECは見ており、より大きな領域と市場を見通している。
これまで、M2Mは「閉じられた空間(peer to peer)のなかでのサービスという性格が強かった。環境や技術が変化するなかで、M2Mクラウドとしてさまざまなモノが、多面的につながり、そこで得られたデータが単一目的で利用されるのでなく、二次活用も含め幅広く使われるようになったことから、シーズとニーズが高まってきている」(木村氏)のが、最近の状況だ。