プライベートクラウドを独自開発する理由--サイバーエージェント - (page 3)

重森 大

2015-03-18 06:30

OpenStackでの実証を経て管理基盤を独自開発

 プライベートクラウドに取り組む意義が分かったところで、それを実現するのは容易ではない。「最初は定番通り、OpenStackを使ってプライベートクラウド基盤を構築した。しかし実際の運用にかかる手間が掛かり過ぎるというのが実感だった」と田中氏。例えば、新サービスのために数百台の仮想マシン(VM)を新規に起ち上げるとする。それらの機器を管理するため、ラッキングされた場所と機器をひもづけて管理したいのだが、これらは手作業で対処する以外になかった。


 また当時のOpenStackではMACアドレスを参照してラックを振り分けるといった細かい調整もできなかったという。近年SDNなどのキーワードをメディアが取り上げ、ネットワーク機器や仮想サーバ基盤が対応を進めているものの、パブリッククラウドと並ぶほどの運用性にはまだ遠いというのが、サイバーエージェントの判断だった。

 こうした経験を経てサイバーエージェントは、OpenStackに足りない機能を自社開発して補うという道を選んだ。「Clover」と名付けられた独自のプライベートクラウド管理基盤は、約1年という短期間で作り上げられた。「スーパーエンジニアがいたのでできたこと」と篠原氏は語るが、OpenStackで一度プライベートクラウド基盤の構築と運用を経験し、そこで不足するもの、自分たちが求めるものが明確化されていたからこそ実現できたことでもあっただろう。

 ネットワークの中核には、F5ネットワークのApplication Delivery Controller(ADC)である「VIPRION」を採用した。ADC製品群の最上位シリーズで、F5の中核をなすロードバランサ「BIG-IP 1500」などF5製品を使い続けてきたサイバーエージェントのインフラチームにとって、なじみのある製品だった。「パフォーマンス、安定性、運用を考えると、一時使っていた安価な他社製品よりも優れていた」とのこと。

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