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知見を企業の本当の戦力に--IoTによる"センス”の獲得 - (page 4)

林大介

2015-04-03 07:00

新しい競争戦略”Sensible Computing”

 有名な著書であるが、楠木建氏の「ストーリーとしての競争戦略」にSP(Strategic Positioning)とOC(Organizational Capability)という二つのキーワードが登場する。これらは競争戦略を語る上での視点で、前者は戦略的に有効なポジショニングを取れるかという話で、後者は組織として他社に模倣されない強みを獲得できるかという話である。

 筆者はこれにもう一つの視点を加えたい。SC(Sensible Computing)、つまりビジネスの状況を察することができるデジタルパワーを備えているかという視点である。

 戦略的ポジショニング(SP)は割と簡単に他社の追随を許してしまう。一方で、組織的能力(OC)は獲得に時間がかかってしまう。この二つの弱点を補う形で洞察的コンピューティング(SC)が必要ではないかと筆者は考える(図3)。


 常に最適な戦略的ポジションに遷移し続けるためには、状況をいち早く察する情報が必要になるし、組織能力の浸透を早めるためにも気の利いた(Sensibleには気が利くという意味もある)情報に囲まれている必要がある。すなわち、地位や経験、知見の獲得にかけた「時間」ではなく、扱いやすい「情報」にどれだけ囲まれているかが競争を左右するようになるだろう。

 既に洞察的コンピューティングが競争環境を優位に導いたと考えられる事例もある。回転寿司のスシロー(あきんどスシロー)は40億件のビッグデータ分析で経営判断のスピードアップと店舗オペレーションの強化を実現した

 顧客は安くておいしいものが食べたいはずだ、という本質的なアプローチにデジタルテクノロジが上手く適合した好例であろう。回転している商品を食べてもらうというアプローチは、戦略的ポジションで言えば実は古典的である。

 しかしながら、どう商品を流せば顧客の需要と自社の供給能力(や品質)が釣り合うのかという「察する能力」については、しばらくの間他社の追随を許さないだろう。一皿ひと皿をIoT/IoE的な観点でつないで、察する能力を身につけたことによる典型的な「デジタルバリューシフト」事例だ。

 IoT/IoEで全てをつなげるという観点で、”センス”を獲得するストーリーについて解説してきた。次回第9回ではIoT/IoEの登場で飛躍的な進化を遂げるであろう製造業に焦点を当てて、どんなデジタルバリューシフトが起こるかを考察していきたい。

林 大介
シスコシステムズ合同会社 シスココンサルティングサービス マネージャー
電機メーカのエンジニア、通信システムインテグレーターのセールスを経てコンサルティングの道へ。ネットワーク、モバイルを中心とし た戦略立案、新規事業開拓、テクニカルアドバイザリーを中心としたプロジェクトを多数実施。昨今はクラウド、M2M、IoT/IoE などの技術トレンドを背景にしたワークスタイル変革に注力し、変革実行支援やソリューション販売支援などを手がける。

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