優良市場は、ベトナムだけではない
ホーチミン市での滞在に先立ち、カンボジアのプノンペンで仕事をしていました。プノンペンでもある国立大学を訪問し、情報通信分野をはじめとする理工系分野の高等教育を見学しました。卒業生が携わることになるカンボジアの産業界についての会議をした際のカンボジア側からの次のような発言が印象に残っています。
- カンボジアでは近年の経済成長に伴い、科学技術の重要性が増してきている。その意味で、国としても大学としても、「電気通信」「IT」「バイオテクノロジー」といった分野に注力していきたい。
- カンボジアは広く外資系を受け入れる余地がある。そのため、特に理工系分野については日本に期待している。
プノンペン市内でも、大通りを1本裏に入るとまだまだ道路の舗装も排水設備も十分とは言えない状況。電力事情についてもベトナムほど充実していないように感じる。ただし、外資を受け入れる許容度はベトナム以上とも感じるため、中小企業にとっても意外なビジネスチャンスがあるかもしれない
個人的には、これらの発言には2つの意味があると思っています。1つは、文字通り、日本からの優秀な製品や技術を活用できる余地があるということ。もう1つは、カンボジアの国内産業の保護を考える必要がないため、カンボジアにおける外資系企業の働きに大いに期待したいということです。
ベトナムとカンボジアの両国について、マクロのデータだけを見れば、ベトナムにはカンボジアの5~6倍の人口があり、1人当たりのGDPも文字通り桁が違います。これだけを見ると、「プノンペンの街並みではレクサスのSUVといった自家用車がホーチミン市以上に走っており、若い女性がこれらを運転するのは珍しくないですよ。ベトナムで見るようなバイクの洪水もなく、車中心の社会のようです」というプノンペン評も眉唾モノになってしまいます。
しかし、外資系企業に対する市場の門戸を開いている度合いはベトナム以上といえる1つの事例かもしれません。そのため、これまでも何度もお伝えしているように、データだけをうのみにすることなく、可能な限り現地に足を運び、真に自社に必要な戦略を取る必要があるでしょう。
皆さんにもう一度伺います――「本当に、ベトナムで良いのですか?」
- 古川 浩規
- インフォクラスター
- 内閣府及び文部科学省で科学技術行政等に従事したのち、平成20年に株式会社インフォクラスター、平成22年にJapan Computer Software Co. Ltd.(ベトナム・ダナン市)を設立。情報セキュリティコンサルテーション、業務系システム構築、オフショア開発を手掛けるほか、日系企業のベトナム進出に際して情報システム構築や情報セキュリティ教育等を行っている。資格等:国立大学法人 電気通信大学 非常勤講師、日本セキュリティ・マネジメント学会 正会員、情報セキュリティアドミニストレータ、財団法人 日本・ベトナム文化交流協会 理事