テクノロジの進化が及ぼす変化を象徴した企業としてタクシー宅配サービスのUberが著名である。Uber以外の事例ということで本稿ではカーシェアサービスのAnyca(エニカ)を紹介する。Anycaは一般のオーナーが持っているクルマを簡単にアプリで借りることができ、スムーズな利用ができる新しいカーシェアサービスとして最近話題を集めているベンチャー企業である。利用者はレンタカーにはない珍しい車にも乗ることができ、柔軟に受け渡し場所、時間を設定できるなどの利点がある。
一方で、オーナーもクルマを利用しない時間帯に自由に貸し出すことができ、利用してもらった分だけの収入が得られることもあり、自家用車の維持費削減にもつながることから人気を集めている。レンタカーに特有の車や場所の確保がサービス展開の足枷になることもなく、オーナーも自らの資産である自家用車を活用して簡単にレンタカーサービスを副業として始めることができることから、サービス自体も広がりつつある。Anycaの事例は、アプリ・ソーシャルメディア・クラウドといったSMAC技術を活用したサービス提供や副業の在り方を暗示しており、同様の動きは今後広がると思われる。
SMAC技術を活用した組織・人事変革を
東京五輪後の事業環境および労働人口の変化に対応すべく、企業は生産の向上と労働力の確保に向けた取り組みはもはや避けられない。労働者にとっても、テクノロジによる自動化の推進・拡大という大きな潮流に対して、“何のために働くのか、どのような価値を出すのか”が問われる時代が迫ってきている。
UberやAnycaの事例のみならず、SMAC技術を活用した新しい取り組みが組織・人事の領域でも始まっている(図3)。GEでは、加速する変化やミレニアル世代の価値観に対応すべく、SMAC技術を活用したこれまでとは全く異なるパフォーマンスマネジメントを導入し運用を開始している。また、BPOベンダーなどの外部企業に自社の定型業務を委託するのではなく、自動化されたソフトウェアによって定型業務を社内で処理する(内製化)取り組みも始まっている。
われわれはこうした“SMAC技術に代表される最先端の技術を導入、活用した組織や人事のさらなる効率化や高度化”を 目的とした取り組みを「デジタル人事」と呼んでいる。第2回ではこれらを紹介しつつ、「デジタル化により日本人の働き方はどう変わるのか」を解説する。
図3:組織・人事領域へのSMAC技術導入:“デジタル人事”により 従業員からのアンケートや情報入力などの対応が10倍に増加した例も
- 田中公康(デロイト トーマツ コンサルティング ヒューマンキャピタルユニット マネジャー)
- 外資系コンサルティングファーム、IT系ベンチャー設立を経て現職。デジタルテクノロジを活用した新しい組織・人事ソリューションの開発に従事。 直近では「デジタル人事」領域の推進リーダーとして、ワークスタイル変革以外にもクラウド、 ソーシャルメディア、ビッグデータを組織・人事の世界に応用し、 生産性向上や職場環境の改善を積極的に推進している。