2016年6月に、人材の採用から育成、評価までをクラウド上で最適化する構想「HRMOS」を発表したビズリーチ。第1弾として、求人媒体ごとの採用状況を一元管理するサービス「HRMOS 採用管理」をスタートし、第2弾として「HRMOS 勤怠管理」のβ版をこの1月に発表、第3弾として「HRMOS 評価管理」を予定している。
AIを最大活用する同社のサービスや開発、社内体制、今後の展望を、同社の取締役 兼 インキュベーションカンパニー長 兼 チーフプロダクトオフィサーである竹内真氏に話を聞いた。
--多くの企業が「HRTECH」という言葉を使うようになりビズリーチもソフトを開発するようになったが、理由は。
以前はマーケットが小さくHRTECHの導入効果が見えづらかったということが、ひとつまた、新しい商品の開発やマーケットの開拓といったデータ活用分野に、テクノロジによって課題解決をしようという経営者は少なかったのではないでしょうか。人材業界は、「人」の紹介や派遣をするようなビジネスでもあり、主戦場は営業側にあったのでテクノロジやエンジニアが入りこむのが、遅い領域だったと思います。
ビズリーチ 取締役 兼 インキュベーションカンパニー長 兼 チーフプロダクトオフィサー 竹内真氏
むしろAmazonなどのECのような、テクニカルに解決できるものが先に進化しました。それに比べて人材領域は10年ほど遅れてると感じます。
開発に関しては、大きく2つの技術がハードルを越えて、広く使えるようになった点が根本にあると思います。
ひとつは、クラウドです。PaaSの普及により大きな初期投資なく、スポットでコンピュータを借りて動かせるようになった。もうひとつはGPUというグラフィック処理装置の高性能化です。これによって凄まじい量の計算を一気に処理できるようになりました。1カ月かかっていた計算が10分でできるケースもあるほどです。
以前は、今日集めたデータを分析して活用できるまで1カ月かかっていたものが、リアルタイムに近くなってきたことで、機械学習やAIに向けた学習モデルが現実的になりました。ソフトウェアとしてもPythonフレームワークなど、いろいろなものが出てきて、複雑でアカデミックな情報を知らなくてもエンジニアが技術に触れるようになりました。
--ビズリーチが考えるHRTECHの意義は。
私はHRTECHが生かせるのは経営だと思っています。経営戦略に対してどういう人を抜擢するのか、どの人をどの位置に配置するかは、相当な量のデータベースを積め込んだ経営者の価値観と感覚が必要だと思います。特にエンジニアのような職種の人選や抜擢は、感覚だけではすごく難しい。
活躍した人のデータを集めて機械学習にかけると、「この人は活躍した」ということを記憶させ、それに近い若手を「この人はもっと責任の大きい仕事を任せてみたらどうなのだ」というアウトプットが出てくるわけです。ただ、それを一社でやることは難しい。その理由は縦割りの組織ごとにデータが存在することや、オンプレミス環境であることだと思います。