SMAC技術が実現する健康経営の世界
SMAC技術を活用した健康経営の例として、「KBSC(健康バランスト・スコアカード:Kenko Balanced Score Card)」を紹介したい。KBSCは、従来のバランスト・スコアカードに健康増進の観点を含めたもので、DTCが健康経営を推進するために独自に定義した考え方である。
具体的には、健康増進の観点から健康KPIを新たに設定し、ダッシュボードを用いて社員の健康状態を簡易かつリアルタイムにモニタリングすることで、企業が必要な対策を迅速に打てる状態を仕組み化していくことを目指す。SMAC技術を活用したウェアラブル等のデバイス導入やクラウド型のプラットフォーム構築を行うことにより、健康情報やライフログなどの新たな情報を取得・蓄積・分析し、KBSCの設定や見直しを継続的に行い、健康戦略サイクルとして構築することが可能となる。

KBSCにおける健康KPIとモニタリング項目の例
KBSCを具体的に整備することにより、検診データや残業時間などの健康関連データに対して手間を掛けて取集・分析するのではなく、複数の健康関連データを迅速に収集・統合し、様々な分析を容易に行うことが可能となるのである。
結び
今後、持続的な企業成長には、事業推進の基盤としての健康経営を実現することが必要不可欠となってくる。企業が従業員の健康問題にどのように取り組むかが、企業イメージや評判などの企業としての社会的な信用問題に直結することは昨今の事例からも明らかである。
企業には、SMAC技術などを上手く活用し、健康戦略サイクルを構築することで、従業員の健康状態の可視化や課題に対する迅速な対応が求められる。また、従業員ひとりひとりが健康に対して前向きになり、自ら健康でいるために自律的に行動していくサポート役となることも求められる。
次回以降は、実際にSMAC技術を活用して人事データの分析を行っていく考え方やその取り組みを紹介したい。
- 田中公康(デロイト トーマツ コンサルティング シニアマネジャー)
- 外資系コンサルティングファーム、IT系ベンチャー設立を経て現職。直近では『デジタル人事』領域のリーダーとして、生産性向上に向けたワークスタイル変革やIT活用支援、クラウド基盤やゲーミフィケーション理論・スマートデバイスを活用した健康経営推進支援などのプロジェクトを多数手がけている。『ワークスタイル変革』(共著、労務行政)他、執筆・講演多数。
- 折本敦子グレイス(有限責任監査法人トーマツ アドバイザリー事業本部 ヘルスケアアドバイザリー マネジャー)
- 金融系シンクタンクにて社会保障研究員、外資系コンサルティングファームにて健康・医療・介護産業のコンサルティング、NPO法人での医療政策支援を経て現職。保険者機能を得意とし、データヘルス計画策定支援など保険者保有のデータ分析から施策立案・実行支援を行う。また、人事データ・保険者保有データを含めた分析により、産業保健の改革支援や健康経営に向けた支援などを行っている。