ビジネスパフォーマンスの達成度がITの価値
――2つめの「IT投資に対するビジネス価値をきちんと示す」とは、どういうことでしょうか。
Ruggero IT投資に対するビジネス価値を示すためには、まずIT投資の中身を分類する必要があります。ガートナーではIT投資を、「ビジネス革新のための支出(Transform)」「ビジネス成長のための支出(Grows)」「ビジネス運営のための支出(Run)」の3つに分類しています。私たちはこれを「TGRフレームワーク」と呼んでいます。
ビジネス革新のための支出とは、たとえば、戦略・企画、マーケティング、製品開発の各プロセスに関わる費用です。ビジネス成長のための支出とはたとえば、マーケティング、CRM(顧客情報管理システム)、営業、製品開発、顧客サポートの各プロセスにかかわる費用です。これら2つには重複する部分もあり、あわせて開発費用ととらえることもできます。
そしてビジネス運営のための支出とは、たとえば調達、製造・サービスデリバリ、人事、経理、法務、ITの各プロセスに関わる費用です。言い換えれば、この支出が運用費用です。
現状では多くの企業が、ビジネス運営のためにIT投資全体の6~7割を支出しています。しかし、経営者にとってはビジネス革新やビジネス成長のための支出が年々増えていき、運営の費用が少なくなっていくほうが心地よいでしょう。経営者がビジネス革新に強い意欲を示しているのならば、そこに多くのIT投資をすべきです。
もうおわかりでしょうが、IT投資に対するビジネス価値を示すためには、ビジネス革新、ビジネス成長、ビジネス運営といったビジネスの観点で説明することが肝要です。CIOとして成功するためには、そうしたIT投資のメリハリをきちんと示せるかどうかが非常に重要なポイントになると思います。

小西 そうした観点でいうと、日本企業はIT投資を財務会計の視点だけで分類してしまっているケースが多いように思います。しかし、それではIT投資に対するビジネス価値を示すことはできないのです。日本のCIOには、ぜひその点をしっかりと認識していただきたいと考えています。
――その意味では、ガートナーが提唱しているTGRフレームワークを活用するのが有効ですね。最後に3つめのポイントである「IT投資が短期的にも長期的にもビジネスパフォーマンスに貢献できることをきちんと説明する」とは、どういうことでしょうか。
Ruggero 先ほどIT部門にとって業務系部門がカスタマーでなく、パートナーになってきているという話をしましたが、とりわけCIOは経営者をはじめ業務系部門に対して、短期的にも長期的にもビジネスパフォーマンスを向上させるために、しっかりとIT投資を行って必ずお役に立ちますよ、ということを明言すべきだと考えています。それがパートナーとの確固たる信頼にもつながります。
もちろん、その裏付けとなるITパワーの拡充は欠かせません。たとえば、企業買収などにも柔軟かつ迅速に対応できるITであることが求められます。そのためのIT投資がきちんとできていることを経営者や業務系部門に示していくのは、CIOの非常に重要な役目となります。
小西 つまりは、ビジネスパフォーマンスの達成度がITの価値そのものであることを、CIOから経営者や業務系部門に示していくことが重要だと考えます。欧米に比べて日本の企業はまだまだそうした認識が不足していると言わざるをえませんが、今回のCIOとして成功するための3つのポイントをぜひ参考にしていただければと思います。