1939年、ウィリアム・ヒューレットとデビッド・パッカードは、パッカード家のガレージでHPを創業した。アップルのような大企業も、その幼年期にはHPの影響下にあった
ヒューレット・パッカード(HP)という会社から、どのような印象を受けるだろうか。
「シリコンバレーが生まれるきっかけをつくった会社」「ガレージからスタートしたベンチャー企業の草分け」など、その時々に良くも悪しくも大きな関心が集まる大企業といえるだろう。むろん、いまでもテクノロジー分野の重要なプレイヤーの一社だ。
そんなHPをめぐる報道がこのところ活発化している。
米国時間1月16日にはWall Street Journal(WSJ)が、「オートノミーとEDSの事業買収に関心を示す外部からの問い合わせがHPに寄せられている」とする内容の記事を掲載。これを補うかたちで、WSJとおなじ系列のAllThingsDが「ただし、HPの公式声明は『各事業を売るつもりはない』となっている」と伝えた。New York Timesもほぼ同じ内容の話を掲載している。
こうした話が出るようになったきっかけは、米証券取引委員会(SEC)への提出書類に「目標達成が望めない事業については売却も辞さない」という文言が盛り込まれていたからだ。この話を伝えた1月1日付のBloombergの記事には次のような引用がみられる。
"We also continue to evaluate the potential disposition of assets and businesses that may no longer help us meet our objectives."
この話を受けて、年明けに投資銀行のUBSがHPの分割可能性に言及したレポートを発行したとBusinessweekは伝えている。UBSが「好ましいシナリオ」として挙げたのは、データセンター関連ビジネスを中核とするエンタープライズ事業と、PCとプリンター部門を中心とするデバイス関連事業への二分割だという。
さらに今週、HPと一部で重複するように企業向けサービス事業へと軸足の転換を進めるデルが、上場廃止を視野に一部の大手プライベートエクイティ(PE)ファンドと交渉を進めているという話が流れた。その流れで「ところで、HPはどうするんだ?」ということになり、オートノミーやEDSの売却に関する打診へ……という報道につながった印象がある。
さて。
こうした話の背景には、HPの株価低迷がある。下のチャートが示す通り、同社の株価はこの3年間で約3分の1に減少し、時価総額は338億4000万ドル(米国時間1月16日時点)まで下落している。
HPの株価の推移(出典:Google Finance)
HPの事業ポートフォリオは多岐にわたるため、競合他社とは単純に比較しづらいが、参考までに各社の評価額(同日時点)を挙げておく。
- アップル(AAPL) 約4760億ドル
- マイクロソフト(MSFT) 約2270億ドル
- IBM(IBM) 約2170億ドル
- オラクル(ORCL) 約1640億ドル
- デル(DELL) 約220億ドル
HPの評価額は、セールスフォース・ドットコム(CRM:約241億ドル)よりも多いが、収益の柱になりそうな決め手を欠くフェイスブック(FB:647億ドル)の半分程度でしかない。いまだに年間の売上が1204億ドル、営業利益も120億ドル以上という会社にしては、相当に低い株式市場の評価である。