クラウドコンピューティングの採用という流れのなかで、IT部門はその力を維持したうえで、新たに得た権限を活用してポジティブな変革を主導できるようになる。
Nucleus Researchの研究部門担当バイスプレジデントであるRebecca Wettemann氏は、The Wall Street JournalのCIO Journalにおける2012年秋の記事のなかで、「自部門のテリトリーを守ろうとする」最高情報責任者(CIO)は会社のインフラをクラウドに移行するという方針に及び腰である場合がしばしばあると同紙に語っている。サーバの導入やソフトウェアのインストールに長年携わってきたITマネージャーにとって、クラウドへの移行は気乗りしない作業だ。そして、ITプロフェッショナルは多くの場合、社内システムの運用や管理によって自らの雇用が保障されていると思っている。しかし、そういった安心感は長続きしないという点を理解できていない。長期的な視野に立った場合、クラウドへの移行によって企業にコスト削減という恩恵がもたらされるのであれば、基幹システムがクラウドへ移行し始めるのは時間の問題だ。
では、ITプロフェッショナルはこういった移行に際して、どのような態度をとるべきなのだろうか?
変革を主導、管理する
新世代の従業員は、1世代前にITがもたらした基本的な知識やスキルを既に身に付けている。ITマネージャーはこういったテクノロジに強い従業員を評価し、変革の重要性を社内に広める伝道師の役割を果たしてもらうことで、懐疑的な従業員の姿勢を前向きなものに変えていくようにしてほしい。
もちろん、真の変革をもたらすというのは口で言うほど簡単ではない。新たなテクノロジを社内に導入する場合、ITマネージャーはそういったものを選別、吟味したうえで提示して、役員たちや各部門の責任者たちだけでなく、長年にわたってレガシーシステムを使い続けてきた従業員たちからの信頼をも勝ち取っておく必要がある。
またITマネージャーは、全従業員が一丸となって移行にまい進するためのサポートを提供できるインフルエンサー、すなわち要となる人物を特定するために全力を傾ける必要がある。ITマネージャーが避けなければならないのは、移行に反対する一握りの従業員らによって移行そのものが人質に取られるような事態である。このため、人間関係に注力し、移行を成功させるうえで必要となる従業員の理解やサポートを取り付けることが重要となる。
また、規模にかかわらず変革というものは、適切な訓練を経なければ効率が悪くなる。このためIT部門が、変革をシームレスに進めるための主導的な役割を担うようになるわけだ。とは言うものの、クラウドベースのシステムによって生み出されるコスト削減を意思決定者に示すとともに、使い勝手の改善や生産性の向上をエンドユーザーに示しておくことで、変革は多少なりとも容易になるはずだ。