グーグル側には、影響力を増す一方のサムスンと良好な関係を保つための牽制材料として、前述のモトローラという保険があり、買収完了後にグーグル主導で設計された初の端末で、iPhoneやGalaxy Sへの対抗を意識した「X Phone」の開発も進んでいるという。ただし、それだけの手札では心許ないと考えてか、ほかにも「HTCやHP(先ごろ初のAndroidタブレットを発表)あたりに、サムスンと渡り合えるくらいの力をつけさせたい」と望む声もあるらしい。
これに対し、サムスン側はマイクロソフトのWindows Phone OSや、自社とインテルで開発を主導するオープンソースのOS「Tizen」(NTTドコモの肩入れが一時話題になった)と、「二股、三股をかけて」のリスクヘッジぶり。また、アマゾンのKindle Fireの例にならったAndroid OSのフォークの可能性さえすでに出始めているという。
また、現在のテクノロジー業界の状況をよく踏まえると、スマートフォンというデバイスが、スマートフォン領域だけの話に留まるはずもない。
テレビの分野では、Google TVを袖にしてApple TVあたりともガチでやり合えそうな「HomeSync Media Hub」なる製品をシレッと出してくるしたたかさも、サムスンは持っている。
「ファーストスクリーン(テレビ)を押さえ、セカンドスクリーン(スマホ)も押さえ……」となれば、あとは「ソフトウェアを作り込み、プラットフォームを形成・拡大していくだけ」ということになろう。下のビデオにあるサムスン幹部の「ソフトウェア関連のイノベーションに向けた取り組みに、これまでの倍以上の力を注いでいく」という発言も、そういう流れの延長線上にあるのだろう。
このビデオに登場するデビッド・ユンなる人物は、サムスンが先ごろシリコンバレーに開設することを発表した「オープン・イノベーション・センター」の責任者だという。
NBC、タイム・ワーナー、AOLなどを渡り歩き、一時在籍したグーグルではYouTubeやGoogle Booksなどに関するコンテンツ・パートナーシップ部隊の立ち上げを手がけたとある。今まさに重宝される「テクノロジーとメディアという2つの世界」あるいは「コンテンツと広告の両分野」がわかる人材、ということになろうか。また、インタビューのなかでユンは、サムスンが「広告ネットワークの役目を担うことを想定している」という趣旨の発言をしている点も注目すべきだ。