AppleのTim Cook氏とIBMのGinni Rometty氏が共同で発表した提携は、IBMのソフトウェアを搭載したAppleのモバイル製品をエンタープライズ分野に投入することを目指すものだ。IBMは、垂直市場向けの「iPad」および「iPhone」アプリを開発し、それを同社の法人顧客に販売する。
この提携が重要なのは、これによってAppleがエンタープライズ分野で普及率を拡大できる立場につくことになるからだ。Appleがこれを重視していることは、発表の中で「普及」という単語が何度も使われたことからも明らかである。Appleがこの提携によって、「iOS」をエンタープライズ分野での重要なプレーヤーにしようとしているのは間違いない。
この記事では、この大胆な取り組みによって最も大きな影響を受けると筆者が考える企業と、企業がモバイル市場に導入しようとしている新しいテクノロジの両方に注目する。
サムスン
大きな痛手を受けるのは「Android」だと考えている人々もいるが、筆者はそう判断するのは難しいと思っている。「Android」は企業体ではないし、結束力のある団体でもない。今のところ、Androidに関してはサムスンが最大の敗者だ。
サムスンは、数で言えばAndroidの大部分を占めており、Appleと同様にスマートフォンとタブレットを扱っている。同社は、デバイス管理およびセキュリティソフトウェアの「KNOX」によって、しばらくの間企業のドアを何とか開こうと努力してきている。
AppleとIBMの提携は、サムスンのそうした取り組みと直接競合する上に、同社を職場環境からたたき出す可能性もある。
Android Wear
筆者は今回の提携の発表以前、Googleの「Android Wear」イニシアティブの結果として、エンタープライズ分野にウェアラブル製品の潜在市場が登場しつつあると考えていた。しかし、AppleとIBMが近づいたことによって、その考えはなくなった。
筆者は、AppleやIBMがウェアラブル製品に注目しているとは思わない。またAndroidはエンタープライズ分野から締め出されることになると考えているが、それと同時に、Android Wearも入れ替わりの激しい世界から追い出されるだろう。Android Wearの弱みは、Android Wearを推進するためにはAndroidデバイスが必要だということであり、IBMとAppleが企業の世界に入り込むことに成功すれば、Android Wearはエンタープライズ分野から事実上撤退することになるだろう。