OracleとSAPにとっては逆風となる大きな変化がエンタープライズ市場に起こっている。このため両社は、エンタープライズアプリの未来に向けた独自の戦略を用意している。本記事では、両社のアプローチについて、その相違点に目を向けて解説する。
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エンタープライズ市場は大きな変化のまっただ中にある。クラウド技術の出現と興隆、そして顧客ニーズの変化、職場に押し寄せるデジタル化の波によって、従来型のソフトウェアを手がけてきた企業は、自らの地位を維持するうえでアプローチを変える必要に迫られている。
SAPとOracleもその例外ではない。同市場において大きな存在感を放っている両社も、アプリをオンプレミスからクラウドに移行するための大規模な投資を行うとともに、既存顧客の維持に向けた努力を続けている。
両社が直面している難問の多くは同じものだが、それら難問に取り組む戦略は大きく異なっている。本記事では、エンタープライズアプリの未来に向けた両社の戦略とビジョンに目を向けるとともに、その強みと機会、課題を解説する。
Oracleの戦略
Oracleは、単なるエンタープライズアプリのプロバイダーというよりも、インフラ全体のプロバイダーだと言える。しかし、米調査会社Forrester ResearchのPaul Hamerman氏の見積もりによると、Oracleにおける事業の約25%はエンタープライズアプリが占めているという。残りは「データベースとインフラ、ハードウェア、ビジネスインテリジェンス(BI)など」だ。
Oracleは昔、クラウドに反対する立場を取っていることで知られていた。しかし、ある時点を境に同社は方針を180度転換し、今ではクラウドへの移行に多大な労力を注ぐようになっている。
IDCでリサーチ担当バイスプレジデントを務めるChristine Dover氏は「彼らのメッセージには一貫性がある。本当に伝えたいことはそれがすべてだからだ」と述べている。
OracleとSAPの両社にとって、エンタープライズアプリ戦略という言葉はクラウド戦略という言葉とほぼ同じ意味となっている。Dover氏によると、両社はともに自社製品の開発だけでなく、企業買収にも力を入れているという。しかしOracleは、同社のCRM製品とともに数多くの事務管理部門向けアプリをクラウドに対応させてきているという点で、SAPよりも若干ながら自社製品の開発に力を入れていると言える。