クラウドインテグレーターのテラスカイがSAPクラウド市場に参入する。この3月1日付で3分の2を出資する関連会社「ビーエックス」を設立し、SAPユーザーのクラウド化を支援する。Salesforce.com中心から基幹システムへとクラウド事業の領域を広げる、次なる成長に向けた施策を打ち出す。
SFDCから事業領域を広げるテラスカイ
テラスカイの佐藤秀哉社長は「SAPの市場は企業のいわば本丸。そこに、どうアプローチするか考えていた」と明かす。背景に、数年前から得意のSFDCとSAPをつなぐ商談が舞い込み始めたことがある。「SAPを少しカスタマイズし、一部をSFDCに移したい、といった相談もある」。だが、同社にアプリケーションをカスタマイズする考えはない。
SAP市場は、クラウドインテグレータにとっても大きな成長を見込める。だが、「SAPエンジニアがいます」といっても、そんな有力IT企業は山ほどある。市場参入しても、後塵を拝するだけで、クラウド市場で培った経験を生かせない。シェアも取れない。
そんな状況の中で、2013年ごろからSAPをAmazon Web Services(AWS)などのパブリッククラウドに移行するユーザー企業が出始めた。東急ハンズなどだ。クラウド化する先行企業の担当者らと会話する中で、有力IT企業でSAPのクラウド化を請け負う広木太氏と知り合った。佐藤社長によれば、SAPをAWS(約30社)やマイクロソフトのアジュール(2社)に移行したユーザーの半分は、広木氏を中心とするチームが手がけているもの。「稀有な存在」と高く評価する。
クラウドとSAPの両方に熟知する技術者は少ない。もちろんテラスカイに、そうした人材はいない。「SAPのクラウド化は特殊な能力がいる」(佐藤社長)からだ。そこで、経験豊かな広木氏らに事業化を持ちかけ、ビーエックスの副社長兼CTOに就いた広木氏を中心にSAPのクラウド事業に取り組み始めた。
ビーエックスの社長も兼ねる佐藤社長は「SAPを基幹とする企業は最低でも1000台以上のサーバを持っている。こうしたSAPをクラウド化するビジネスはいくらでもある。(今年53歳になる)私が60歳になるまで、このビジネスは続く」と期待する。ちなみに、SAPジャパンのクラウド新規受注は15年度に3倍近く増え、「クラウド事業は軌道にのった」と説明している。
3月に事業を開始したビーエックスも、初年度に1億5000万円の売り上げを見込む。同社がクラウド化のコンサルティングやデザインを担い、テラスカイと関連会社でAWS専門に展開するサーバーワークスがSAPの周辺アプリケーションのクラウド化を請け負う体制を考えている。