小型・超小型衛星を活用した衛星コンステレーションを構築し、これまでより安価かつ高頻度に衛星画像を取得できる環境が整ってきたため、幅広い産業に衛星画像が活用されるようになってきた。
その特徴の1つとして、近年は自社で衛星を製造または保有せずに、衛星画像をビッグデータの1つとして取り扱い、その他のさまざまなデータと組み合わせながらAI解析ソリューションや、アプリケーションの開発などを担う企業が登場している。
前回の記事で紹介した米国のOrbital InsightやDescartes Lasなどがその代表例であり、彼らは衛星画像などからリアルタイム性の高いマーケット情報を解析し、金融機関などにサービス提供している。その解析はAI、クラウド技術、ディープラーニングといった近年のICTの進歩によって支えられている。
このようにリモセン衛星から取得された衛星画像は、単純に画像情報として売買され活用される時代から、その他の膨大なデータ(気象情報、交通情報、人口動態、地上の各種センサなど)と組合わされるビッグデータの一つとなり、ビッグデータ解析やAI解析を通じて幅広い産業に対し付加価値を提供していく時代へと遷移している。
そのため、今後は衛星画像を含むビッグデータ解析や、解析結果をユーザーに届けるアプリケーションの開発がより加速し、エンドユーザーの知らないところで幅広く衛星画像データが利用される時代が来ると予測できる。
無人島でも高速インターネット時代の到来
通信衛星は静止軌道と呼ばれる地上約3万6000キロを周回する人工衛星で、近年急速に普及している航空機内におけるWi-Fiサービスもこの通信衛星を利用している。
静止軌道はその名の通り、地上から見ると常にその衛星が上空に位置している(地上から見ると衛星が上空に静止している状態になる)。そのため、通信衛星は常に対象エリアの上空に位置し、地上との通信が可能である。
一方で1機の通信衛星でカバーできる領域は限定的になってしまい、地上と人工衛星の距離が長いため通信に遅れが生じたり、通信の品質が悪くなったりしやすいという欠点もある。
その通信衛星の概念を変えたのが、通信衛星によるコンステレーション計画である。リモセン衛星同様に複数機を比較的低い軌道上に整備することにより、全球をカバーし、高品質で遅延の少ない通信網の整備を目的に計画が進められた。
その通信衛星コンステレーションの先駆けとなったのがIridium Satellite Communicationsである。同社は衛星電話の国際的なネットワーク網を構築することを目的に1980年代に通信衛星のコンステレーション計画を打ち出した。
しかし、当時のICT技術では通信速度が十分に出せなかったことや、音声通話にフォーカスした事業であったことなどもあり、90年代から急速に成長したデータ通信の需要に対応できず事業を大きく広げることができなかった。