インテル・メディアを率いるErik Huggers。インテルは新プロジェクトに半導体から最も遠いオーバー・ザ・トップを選んだ(ATD主催「D: Dive Into Media」のライブ映像を撮影)
インテルが先週のAllThingsD主催カンファレンス「D: Dive Into Media」で、一部で噂となっていた「インテル・メディア(Intel Media)」の取り組みを部分的ながら明らかにした。
まだ全容が明らかになっていないインテル・メディアに関する興味深い考察をThe Vergeで見つけたので、今回はこの取り組みと考察について、すでにわかっている事柄の整理とともに少し紹介してみる。
「インテルがインターネット・テレビ攻略の鍵をついに見つけたと考えられる理由」と題するこの記事。結論らしきものから先にいってしまうと、それは「インテルがスマートTVに対応するセットトップボックス(STB)のスタンダード確立を狙っているのではないか」というもの。
「PCの世界で大儲けできたのも、Wintelという事実上の標準があったからではないか」という発想は、この件を考えるにあたって、なかなかいい着眼点と思える。ただし、いったんデファクト標準を握ったあと、具体的にどんな形でマネタイズしていくのかという部分はまだよくわからない。単に消費者向けのハードウェア販売と有料配信サービスの提供だけでは、規模感のある事業をつくりあげるのは難しいようにも思える(註1)。
註1:規模感のある事業をつくりあげるのは難しい
米CATV上位10社の2012年9月時点での契約者(加入者)数は、合計でざっと6000万件。これに衛星テレビのディレクTV(約1900万)、ディッシュ・ネットワーク(約1400万)をあわせても1億件には届かない。欧州など米国以外の地域も想定すればもう少し大きな数字が見えてくるかもしれないが、スマートフォンのように比較的頻繁に買い換えられるようなものにはなりにくいようにも思える。
その一方で、有料テレビ配信事業者からコンテンツホルダー(テレビ局)各社への支払い(仕入れコスト)は年間400億ドル超に達する。これらの事業者が消費者から受けとる売上やテレビ局側の広告収入まで合わせると、この倍以上の規模がある市場(註2)は、テクノロジー系各社がなんとか手を突っ込みたいと思うほど旨味のある領域であることは間違いない。
註2:年間400億ドル超の2倍
生憎と市場規模を示す手頃な数字が見つからなかったが、テレビ局の仕入れコストについては「2012年に推定407億ドルに達する見込み」とするグラフがWSJの記事(2012年3月)に出ている。
オーバー・ザ・トップの台頭
この分野ではここ数年、「コードカッター」と呼ばれる事象が大きな注目を集めてきた。