――全体としてクラウドにフォーカスした内容になった。
クラウドが社会、人間の生活に及ぼす影響は大きいと実感しています。
Oracleのテクノロジはあらゆる社会インフラのIT基盤に入っており、その責務があります。Amazon Web Services(AWS)などの新興クラウド専業ベンダーはそのような過去がありません。だからこそ、いろいろなことを試せるのですが、Oracleは金融、防衛、社会保険などなかったら困るようなところで使われています。パートナーと一緒にこれからも技術を提供していきます。引き継いでやっていくという使命を感じています。
われわれはものづくりの会社です。仮想環境を売っているのではないし、サービスだけを売っているのでもない。実直にものを作って、それをクラウドという形で提供します。2日目の基調講演でCTOのLarry自らが新しいチップ「M7」を発表しましたが、こういったことは業界で少なくなってきていると思います。
クラウドをなす基盤は部品が集まってできています。仮想化だけでクラウドは提供できません。どこかにサーバがあり、ネットワークがあるのです。自動運転に例えるなら、便利になった一方で、だれかに乗っ取られて自動車が暴走するかもしれません。クラウドも同じです。今回Oracleはチップレイヤでセキュリティを常時オンにしていくと発表しました。
AWSは良いサービスを提供しているし、SAPも調子がいい。それは(データベースなどの基盤として)Oracleを使っているからです。われわれは地味かもしれませんが、いろいろなテクノロジをクラウドで提供していきます。これをOpen Worldで分かっていただけたのではないでしょうか。
日本では分かりやすく提供していくために、POCO(The Power Of Cloud by Oracle)というキーワードをつけました。Oracleのクラウドを使ってこんなことをやっているという事例を募るPOCOコンテストも展開します。すでにアイデアが集まってきています。
――Sun Microsystems買収当時は批判もありましたが、先を見越してハードウェアの重要性を認識していたということでしょうか?
短期的な利益を望んでいたらできなかったことだと思います。文句を言われながらもSunを買収し、チップを継続して開発している。これはLarryがいるから、Oracleだからできたことだと思います。われわれは現在でも売り上げの約13%を研究開発に投じています。
--エンタープライズのシステムでは、AWSなどの新興専業ベンダーが実際に利益率の高いミッションクリティカルな領域をできるのかという疑問も聞かれます。
できると思いますよ。Oracleから部品を買えばよいのですから(笑)。
ですが、いままでの資産を継承してできるかというと難しいかもしれない。AWSのアーキテクチャがミッションクリティカルな領域に合うかどうかは分かりません。そこはOracleが実績を持つ領域であり、考えを持っています。われわれはオープンであり、これまでの資産や技術を継承しながらクラウドに持っていけるし、クラウドじゃないところで使ってもらうこともできます。
――一方で、AWSもリレーショナルデータベースに注力している。長い目で見たときに対抗関係になるのかもしれない。
最終的にはお客様の判断です。安心して使えるかというところに帰結していくのではないでしょうか。安くて良いものが受け入れられると思いますが、どういったものが今後受け入れられるのかは、お互いに切磋琢磨しながらやっていくべきでしょう。
Oracleも研究開発に積極的です。M7の次のチップが出てくるでしょうし、ソフトウェアや仮想化の技術も開発しています。既に600近いアプリをクラウドで提供しており、ERPをクラウドで提供していきます。
システムインテグレーターをはじめとしたパートナーとの連携は、AWSや新しいクラウドサービスプロバイダーとの違いとなり、連携を通じて違うものが提供できると思っています。第1四半期はSaaSとPaaSの新規受注額が前年同期比で450%伸びました。規模としてはまだまだ小さいが、これからどのようにクラウドに使いこなすことができるかということを含めて、雰囲気やバスワードだけではなく実態のあるビジネスをやっていきます。