Oracleがクラウドに本腰を入れている。10月に米サンフランシスコで開催した年次イベント「Oracle Open World(OOW)」のメインテーマはクラウド。しかし、クラウドではAmazon Web Services(AWS)、Salesforce.comなどが市場をリードしており、これまでとは違う戦いにならざるを得ない。
OOW 2015でLarry Ellison氏が放った言葉「”IBMとSAPは敵じゃない”」の真意は何か。また、Oracleの強みと弱みは何か――日本オラクルの社長兼最高経営責任者(CEO)杉原博茂氏に話を聞いた。
日本オラクルの社長兼最高経営責任者(CEO)杉原博茂氏
――OOW 2015を米国で開催しました。今年のメッセージは何か?
共同創業者でCTO(最高技術責任者)を務めるEllison、最高経営責任者(CEO)のMark Hurdなどが講演しました。
まずは創業37年になり、データベースだけ売ることもできるにもかかわらず、すべてをクラウドで提供できるように変えていくというLarryの情熱を感じました。自分たちが作り上げた帝国を自らまた変えていく――これはIT業界に限らず、すべての経営者に勇気を与えるのではないかと思いました。すべての成功している経営者に共通しているのは、そこにパッションがあるかないかであると言われますが、やはりこの会社にはパッションがあると感じました。
Larryは72歳になりますが、OOWでは自らがデモをしてこれからクラウドの時代になるということを示しました。クラウドではAmazon Web Services(AWS)が話題をさらっていますが、古参のベンダーという点ではOracleが唯一魂を入れて、これらの新興勢力と戦っているのではないでしょうか。
革命的だと思ったのが、IntelのCEO(Brian Krzanich氏)がデータベースのOracleの基調講演に登場して”いっしょにやっていく”というメッセージを出したことです。境界線がなくなってきたという印象を受けました。
――日本のユーザーはOpen Worldをどのようにとらえるべきか。
日本からいらっしゃったお客様は前年比25%増え、約500人と過去最多の水準でした。
基調講演ではGeneral Electoricの最高情報責任者(CIO)を務めるJim Fowler氏が登壇し、積極的にクラウドを採用すること、Oracleとパートナーとして付き合うことなどについて話しました。日本の企業が学べることは、”パートナー”という表現ではないでしょうか。”ベンダーさん”ではなく、ITのパートナーという感覚でわれわれを活用するという考え方です。Oracleをどう活用して差別化を図るか――新しい価値を創造して差別化するということです。
また、CEOに対してデジタルに対して保守的にならなくてよいと伝えている話も興味深かったですね。日本の経営者の中に”デジタル音痴だから”という人がいるとしたら、もうデジタルは無視できません。GEはインダストリアルインターネット、Siemensはインダストリー4.0と提唱しているようですが、日本企業はどうするのか。東京五輪が控えていますが、その後も持続性のある形で展開できるのかが問われていると思います。