ITベンチャーらとの共同開発で実現
実は、FIELD Systemにリアルタイム処理、自律分散、セキュアな環境などを実現するために、ファナックは深層学習などAIの技術開発に取り組む日本のプリファード・ネットワークス(PFN)と産業用オートメーションの米ロックウェル・オートメーション、ネットワーク機器の米シスコシステムズの3社との共同開発に踏み切った。
PFNの西川徹社長は「ロボット同士が協調するオープンなプラットフォームを世界に先駆けて実現するのがFIELD system」と説く。シスコのローワン・トロロープ上級副社長は「工作機械などをリアルタイムに接続し、工場の機器の最適化を図るFIELD systemは、ムーアの法則のように現場を大きく変革させる」と、意義を説明する。
ファナックは早ければ今秋にもFIELD Systemのサービス提供開始に向けて、販売網の整備に乗り出した。その1つは、顧客対応の窓口を1つにするために、ロボットとFA、ネットワークの技術力を合わせ持つ国内外のインテグレータ約100社と話し合いを始めたこと。パートナー企業に、このプラットフォームを活用した生産性や高品質を向上させるソリューション構築に期待している。
こうした世界の製造業にFIELD Systemの導入を働きかける仲間作りが、デファクトの成否のカギを握る。その時、伝統的なIT企業は、ファナックのような産業別プラットフォーマとの新たな関係構築を迫られることになるだろう。
- 田中 克己
- IT産業ジャーナリスト
- 日経BP社で日経コンピュータ副編集長、日経ウォッチャーIBM版編集長、日経システムプロバイダ編集長などを歴任し、2010年1月からフリーのITジャーナリストに。2004年度から2009年度まで専修大学兼任講師(情報産業)。12年10月からITビジネス研究会代表幹事も務める。35年にわたりIT産業の動向をウォッチし、主な著書に「IT産業崩壊の危機」「IT産業再生の針路」(日経BP社)、「ニッポンのIT企業」(ITmedia、電子書籍)、「2020年 ITがひろげる未来の可能性」(日経BPコンサルティング、監修)がある。