米IBMは米国時間10月26~30日、ビッグデータに焦点を当てたイベント「IBM Insight 2014」を開催。イベント2日目には、9月に発表された「Watson Analytics」のほかに新しく発表したSaaS型のデータ品質管理ツール「DataWorks」やSaaS型のデータウェアハウス(DWH)「dashDB」などが解説された。
Insightは以前「Information On Demand」の名称で開催していたイベント。今回の来場者数は前回の1万3000人を上回ると見込まれている。名称を変更したことからも分かる通り、今回のイベントのテーマは、ビッグデータ時代にさまざまなデータに潜む価値を“洞察(インサイト)”することが企業にとって欠かせないものであることを前提にしている。
10月27日に開かれたゼネラルセッションでホスト役を務めたJake Porway氏は元The New York Times紙のデータサイエンティストを務めていた(現在は非営利法人=NPOのDataKindに所属して、データ分析のノウハウやリソースに乏しい団体とデータサイエンティストの橋渡し役を担っている)。
Porway氏は、これまでの経験からデータ分析の仕事で一番面白いのは、巨大なデータセットを分析することでも、データを派手なビジュアライゼーションに変えることでもないと説明。「探偵の気分になって、パズルを完成させられた時に“そうか”という閃きを獲得する」ことが楽しいという。
現在のビッグデータ時代についてPorway氏は「歴史的な時代」にあると表現。「これまでの3年間は蓄積されたデータに何らかの法則を見つけるのは専門家しかできなかった。今では誰でもできるようになった。これは大きな変化だ」と解説した。
IBMのインフォメーション&アナリティクスグループのシニアバイスプレジデントを務めるBob Picciano氏も「今はイノベーションの時代であり、これまでとはまったく違う時代になった」と言い換えた。Picciano氏は、最高経営責任者(CEO)などCxOの経営幹部が出席したIBMのイベントに参加。出席した経営幹部も「今はまったく違う時代になっている」との感想が出たことを挙げた。
IBM インフォメーション&アナリティクスグループのシニアバイスプレジデント Bob Picciano氏
Picciano氏はビッグテータ時代である現在を“インサイト経済”の時代と表現した。データ分析から獲得した知見が問われる時代になったという。そのインサイトを支えるのはデータであり、クラウドであり、“System of Engagement(SoE)”であるという。
SoEとは、統合基幹業務システム(ERP)を含む“System of Record(SoR)”とあわせて使われる言葉だ。SoRはERPなど業務を回すためのバックエンドのシステムをまとめるものであり、SoEは顧客管理システム(CRM)などを指して、顧客との関係を拡大、深化させるためのものだ。
「データとクラウド、そしてSoEを同時に組み合わせることでインサイトを得られる」(Picciano氏)
新しい企業“D世代”との競争
Picciano氏によると、毎日4.5エクサバイト(4500Pバイト)ものデータが生成されているという。これは「2年前に専門家が予想した量の2倍になる」。そうした現在は、“新しい企業”との競争が始まっているとPicciano氏は説明する。
ここで言う“新しい企業”とは、データの価値を知っていて、データをたくさん持っていて、データを分析することでビジネスを成長させている“Generation D(D世代)”の企業だとPicciano氏は語った。データ分析は新しい顧客を獲得するためのものであり「アナリティクスの仕事は過去3年間で136%増えてきている。データが重要視されていることの証拠だ」(Picciano氏)
これまでのデータは「ビジネスの副産物」というPicciano氏は、これからは「データを主役にしていかないといけない。データを分析して知見を得て、データを価値にしないといけない。アナリティクスが成長のエンジンになっている」と主張。「今重要なのは“System of Insight”」とPicciano氏は提言した。
Pratt & Whitney CIO バイスプレジデント Larry Volz氏
ゼネラルセッションには航空機用エンジンを開発、製造するPratt & Whitneyで現在最高情報責任者(CIO)でバイスプレジデントのLarry Volz氏が登壇した。Pratt & Whitneyは、IBMをパートナーとしてデータ分製品やコンサルティングを利用して、エンジンの不具合がどんな状態で出るのかを予想するように進めているところだ。
データ分析は、現実に起こった過去がなぜ、どんな理由があったのかを分析するのが一般的だ。これに対してIBMなどを含めて、データ分析ソフトウェア領域では、未来にどんなことが起こるのかを予測する“プレディクティブアナリティクス”のアプローチが注目されつつある。