Pratt & Whitneyでも、プレディクティブアナリティクスで空港や飛行中などのデータからエンジンの不具合が出るのか、あるいは不具合が出ないように、故障する前に整備などをして予防的措置を講じようとしている。航空機のエンジンが想定外に故障してしまうのは、航空会社や軍隊などの利用する企業にとっては、経済的損失につながりかねないために、事前に分かっておいた方が得策だからだ。
「ビッグデータを分析することで求められるのはビジネス上の成果だ。これはビジネス部門が求めている。IT部門はビジネス部門と連携することが求められている。アナリティクスで成果を得るには、ビジネス部門との連携が欠かせない」(Picciano氏)
System of Insightが重要という
ビジネスユーザーでも使える
インサイトを得るための手段となるのがクラウドだ。クラウドを企業が利用するのは多くの場合、以前よりもコスト削減を求めてのことだった。だが、Picciano氏は、企業がクラウドに求めるのは「俊敏性(アジリティ)」と説明した。クラウドはシステムの「実装(デプロイメント)を加速させられる」からだ。
Picciano氏は、ほかの企業と比較して「D世代の企業はクラウド上でのデータ管理を1.8倍使っている」という調査結果を挙げた。D世代はまた「最大で80%がクラウドでビッグデータアナリティクスを使用としている」という。「クラウドのアジリティでIT部門とビジネス部門の溝を埋められる」
IBMが提言するSystem of Insightで欠かせないのが、対象となるデータから最大限の価値を得ることだ。そのためには「より多くの問題を解決でき、より多くのエンドユーザーが使えるようになることであり、より多くの場所で使えるようになることだ」(Picciano氏)。そうした文脈で紹介されたのが、9月に発表されたWatson Analyticsだ。
Watson AnalyticsはIBMが進めていた「Catalyst Insight」プロジェクトの成果であり、IBMが開発、提供しているビジネスインテリジェンス(BI)ソフトウェアの「Cognos」に搭載されているビジュアライゼーション機能と、同じく統計解析ソフトウェアの「SPSS」にある予測分析機能を合体させたものになる。
Watson Analyticsでは、ビジュアライゼーション機能でデータをグラフ化、チャート化するだけでなく、クリックでより詳細なデータを深掘り(ドリルダウン)できるようになっている。ゼネラルセッションでは、Watson Analyticsを使って、保険会社がキャンペーンを展開する際に、どんな顧客に効率的にクロスセリングしていけばいいのかが実演された。
実演では、グラフやチャートをドリルダウンすることで、より多くの商品を買ってもらえそうな顧客を探し出し、キャンペーンの効果で売り上げがどれだけ向上できるかを予測することもできることが見ることができた。
Watson Analyticsの特徴としては、自然言語で検索できることも挙げられる。実演では「どのキャンペーンが顧客からの反応がいいか」「キャンペーンに対する顧客の反応」と検索すると、その結果がグラフとなって表示される場面を見ることができた。
データ分析と言えば、一般的なイメージとして「統計学の知識が必要」「データサイエンティストのような専門家がいないときちんとした効果が得られない」と思われることがある。IBMとしては、この課題を解決するためにWatson Analyticsを開発したと表現できる。
IBM ビジネスアナリティクス担当ゼネラルマネージャー Alistair Rennie氏
ゼネラルセッションの後の会見でIBMのビジネスアナリティクス担当のゼネラルマネージャーであるAlistair Rennie氏は、予見や予測といったものは「これまでデータサイエンティストのものだった。だが、Watson Analyticsは、普通のビジネスユーザーでも使えるようにした」と開発の狙いを語った。「Watson Analyticsはビジネス部門のエンドユーザーに使ってもらいたい」(Rennie氏)
Watson Analyticsは、IBM版アプリストアと言える「IBM Cloud marketplace」から提供されることがイベント2日目の10月27日に発表された。