クラウドの先に、IT企業のどんな姿があるのだろう。
グループウエアを展開するサイボウズがクラウドサービスの提供を公表したのは、2011年11月のこと。クラウド基盤cybozu.comのユーザーは15年6月末に1万1000社を超え、クラウド関連の売り上げは全体の3分の1を占める規模に成長した。クラウドの比率は月を追うごとに高まっているものの、実は落ち込みを予想したパッケージソフトの販売は堅実な売れ行きをみせているという。
サイボウズの青野慶久社長が4年前にイメージ通り、クラウドの導入は進んでいるという。1つは、中小企業のクラウド化への取り組みが早いこと。「中小企業は、新しいものへの抵抗がない」(同)からだろう。もう1つは、クラウドを受け入れられない大企業や中堅企業が存在すること。「SI文化があり、変わるのに時間が少しかかっている」(同)こともあるだろう。
それ以上に社会構造を変革させるクラウドに対して、既得権益者が危機感を抱いているからかもしれない。事業構造の変革を嫌がって、クラウドの提案に消極的な伝統的なIT企業もいる。今の収益源のハードやソフトの販売とそれに伴うシステム開発のビジネスを守りたいのだろうが、ここに成長を求めるのは終わっている。
その一方で、IT企業を取り巻く環境変化を理解し、開発環境のkintoneを活用したシステム構築を手がける中小IT企業が増えている。ジョイゾーなどだ。戦略商品に位置付けるシステム販売会社も出てきたという。クラウドビジネスの成否は、サービスやソフトの価値を高めていくエコシステム、つまりパートナーとの協業の仕組みにかかっている。