「SPARC/Solarisの既存ユーザーはもちろん、(HPの)SuperDomeや(IBMの)PowerのシステムもSPARC SuperClusterに統合できる」
つまりは、HP-UXやAIXのユーザー企業をSPARC/SolarisベースのSPARC SuperClusterに乗り換えさせようという狙いがあるのだ。
果たしてOracleの狙い通りにHP-UXやAIXのユーザー企業がSPARC SuperClusterに乗り換えるどうかは、まだ分からない。ただ、Oracleがそう思ってしまうのは無理もない話だ。Exadataの成功例があるためである。ソフトバンクモバイルが(米Teradata製とみられる)DWH36ラックをExadata3台に刷新しているし、「楽天証券も既存システムをExadataに統合」(野々上氏)しているからだ。

コンポーネントは性能で勝ちにいく
それでは、同じSPARC/Solarisベースで考えると、SPARC T4サーバとSPARC SuperClusterでは、どういう違いがあるのか? ZDNet Japanの取材にSigler氏がこう答える。
「自分たちでシステムを構築したいユーザー企業はSPARC T4が向いている。アーキテクチャを統合したいと考えるユーザー企業にはSPARC SuperClusterを勧めていく」
そう説明するSigler氏は「Engineered Systemの製品はBest of Breedのシステムに対して戦っていく。コンポーネントレベルでもIBMやHPに対して性能で勝つようにしていく」とも語る。ここからOracleの今後のハードウェア戦略が見えてくる。

すなわち、SPARCやSolaris、SPARC T4サーバといったコンポーネントで製品開発を続けていくと同時に、そこから得られた技術をEngineered Systemで開発する製品にも活かしていくという戦略だ。SPARCやSolarisなどのコンポーネントに投資が続けられているというのは、こうした戦略があるためである。
コンポーネントに対する投資を示す証拠として、SolarisやSPARCがそうであるように、2011年6月にストレージ製品を提供する米Pillar Data Systemsを買収している。この買収によってOracleは、ストレージ製品のポートフォリオを拡充。国内でもSANストレージの「Pillar Axiom 600」の提供が1月から始まっている。
注目されるIBMの新製品
ここまでEngineered Systemを中心にみることで、Oracleのハードウェア戦略がどのようなものであるかをまとめてきた。かなりの分量を割いてきたのは、もちろん理由がある。
というのは、日本時間の4月12日にIBMが“世界同時”に「Expert Integrated System」という製品を発表するからだ。この製品は、Engineered Systemのようにハードウェアとソフトウェアを作りこんだ製品になると業界でみられている。果たしてExadataかExalogicの対抗製品になるのだろうか?
考えてみれば、IBMはDWHアプライアンスのNetezza(OOW 2008で発表された当時、ExadataはDWHアプライアンスとして喧伝されていた。これはNetezzaの躍進に明らかに影響を受けている)のほかにも、BI/DWH分野で、この数年企業買収を続けている(関連記事1、関連記事2)。ひょっとしたら、今回発表されるExpert Integrated Systemは、そうしたBI/DWH分野での集大成とも言える製品になるのかもしれない(つまりはExalytics対抗製品?)。
いずれにせよ、IBMが発表するExpert Integrated SystemがどのようなSystemなのか、注目が集まっている。