「AWS、マイクロソフト、グーグルの2020年--主要クラウド動向(1)」に続き、「ハイブリッド/マルチクラウドで躍進狙うIBMやヴイエムウェア--2020年の主要クラウド動向(2)」をお届けする。
ハイブリッドクラウド/マルチクラウド
ハイパースケールクラウドベンダーらの戦いが繰り広げられるなか、レガシーインフラを扱うベンダーらは影が薄くなるだろうと考えるかもしれない。しかし、IBMやDell Technologies、Hewlett Packard Enterprise(HPE)といった企業は、プライベートクラウドやパブリッククラウドとともに、顧客のデータセンターを活用するという、マルチクラウド配備の仲を取り持つ接着剤になろうとしている。要するに、多くのエンタープライズ企業がマルチクラウド戦略に着目しているということだ。
IBMの最高経営責任者(CEO)の座を間もなく退くGinni Rometty氏によると、Red Hatを買収した最大の理由は「ハイブリッド型のマルチクラウド配備」を加速させるためだったという。その根拠は、企業のワークロードの大半はまだクラウドに移行しておらず、移行の際に顧客はさまざまな選択肢を要求するというところにある。言い換えれば、今まで何かあった場合の窓口が一本化されていることを売りにしていたベンダーたちは、クラウドサービス戦争において中立の立場をとるようになるということだ。
こうしたマルチクラウドイネーブラーとしては、オープンソースのパイオニアであり、IBM傘下となったRed Hatと、Dell Technologies傘下のVMwareの2社が挙げられる。さらに特定の問題解決に特化している、HPEやLenovo、Cisco Systemsといった企業があるうえ、活気あるハイブリッドクラウド/マルチクラウド市場が検討対象として存在している。以下では、パブリッククラウドで要となるポジションを狙う重要な企業と、そういった企業がどのようにハイパースケールプロバイダーとつながろうとしているのかを見ていきたい。
IBM
Red Hat製品を活用し、ハイブリッドクラウド配備面での躍進を狙う
IBMは340億ドル(約3兆7000億円)を投じたRed Hatの買収で売上高の増加を図ろうとしている。
提供:Getty Images/iStockphoto
IBMは、Red Hatの買収に340億ドルを投じた根拠と、同社の今後の売上高を飛躍的に伸ばすための戦略について概説した。IBMの2019会計年度第4四半期決算を見れば、Red Hatの買収がもたらす可能性を感じ取れるはずだ。