医療制度は確立しつつあるが、運用効果はこれから
ベトナムでもベトナム人に対する社会保険としての健康保険制度が開始されました。サラリーマンは給料から天引きされて徴収されるシステムとなっています。しかし、現実には保険を適用できる病院が限られているため、使い勝手は日本の健康保険制度のようにはいきません。
そのためべトナム人従業員にとっては、せっかくの社会保障制度の一つも「払い損」という意識があるのかもしれません。
また、薬に対する治験制度や管理制度が日本とは異なっており、街中の薬局で処方箋なしに外国製を含め多くの種類の抗生物質を購入することができます。私の体験でも、高熱が出て手持ちの薬では対処できないときに、ベトナム人の友人が薬を買ってきてくれることがありますが、服用すると驚くほど効果があることもあります。
ベトナム人の中には「薬はフランス製が良く効く」といった経験則があるようですが、小柄なベトナム人が欧米人を基準とした量の薬を服用することは危険なのではないかとすら感じてしまいます。現在、治験制度や管理制度を整備する動きもありますが、このままでは薬剤耐性菌の問題や薬が効きにくい体質になるといった問題も起こるかもしれません。
ベトナム保健省もこれらの問題に取り組む必要性を感じているようですが、並行して数多くの社会インフラを構築しなければならないベトナムにおいては、すべての項目に十分な社会資源を振り分けることができません。そのため、ベトナムの医療システムがより効果的に稼働するためにはまだ時間が必要になると思われます。
ダナン女性こども病院での一コマ。「ダナン女性こども病院のスタッフは、患者及び患者のご家族からお金や贈り物をいただきません」と書いてある掲示物。院内にあちこちに掲示してあり、医療スタッフ一同の矜持をうかがい知ることができる
ベトナムに出張したり、観光で訪れる人にとっても、バイクの洪水の中でいつ交通事故などのトラブルに遭うか分かりません。観光や商用といった目的を問わず、ベトナムでの滞在が楽しいもので終わるよう、セルフコントロールが可能な部分での健康管理にはぜひご留意ください。